臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
症例
Anthracycline系抗腫瘍剤による慢性心不全に対するβ遮断薬少量連日投与の有用性
岡本 昌隆宮崎 仁都築 基弘井野 晶夫江崎 幸治平野 正美
著者情報
ジャーナル 認証あり

1995 年 36 巻 11 号 p. 1305-1310

詳細
抄録

anthracyclineによる慢性心不全にβ遮断薬の少量連日投与をおこない,心機能の回復を得た。症例は44歳女性,89年9月診断のAML (M4E)。治療開始時の心左室駆出率(LVEF)は59%であったが,90年7月には33%に低下し以後の治療は中止した(daunorubicin総投与量486 mg/m2, aclarubicin 135 mg/m2, mitoxantrone 55 mg/m2)。同年10月に心不全(NYHA III°)を発症し,dobutamin, furosemide, digoxin等では症状は改善せず(NYHA II°), 12月よりmetoprololの少量連日投与を試みた(5 mg/日より開始し,4∼8週毎に倍量に増量し40 mg/日を維持量とした)。心不全症状は徐々に軽快し,91年2月にはLVEF 36%, NYHA I°で退院となり,3月以降は心不全症状は消失した。その後LVEFは92年5月には44%, 93年7月には53%まで改善した。anthracyclineによる慢性心不全に対するβ遮断薬の作用機序は明らかではないが,一部の心不全症例には有用である可能性が示唆され,今後検討されるべき治療法と考えられる。

著者関連情報
© 1995 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top