臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
症例
9年間の寛解中に乳糜胸を呈した悪性リンパ腫
河内 康憲渡辺 礼香西原 利男内田 立身瀬津 弘順森 将晏
著者情報
ジャーナル 認証あり

1995 年 36 巻 11 号 p. 1311-1315

詳細
抄録

症例は69歳,男性。1986年2月腸閉塞のため当院外科に入院し試験開腹をうけ,後縦隔より後腹膜に亘る巨大腫瘍と空腸に手拳大の腫瘍を認めた。肉眼的に慢性肝炎が疑われた。空腸腫瘍はびまん性大細胞型の悪性リンパ腫と診断され,3月内科に転科した。化学療法にて寛解し6月に退院した。1991年夏頃に血小板減少,腹水,食道静脈瘤が出現し,HCV抗体が陽性であった。利尿剤で腹水は軽快した。1994年10月に右胸水が出現し当科に入院した。胸水は乳糜様でカイロミクロンを181 mg/dl認めた。持続吸引で胸水は消失し11月に退院したが,乳糜胸の再発のため12月に再入院した。今回は持続吸引では消失せず,胸腔内にOK432 10 KEを2回投与し胸膜癒着にて消失し1995年3月に退院した。GaシンチやCT像で悪性リンパ腫の再発は認められなかった。本例は肝硬変以外の病変を認めず乳糜胸の原因ははっきりしないが,過去に悪性リンパ腫が浸潤した胸管は,寛解中であっても破綻をきたしやすいのかもしれない。

著者関連情報
© 1995 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top