1996 年 37 巻 4 号 p. 303-310
慢性貧血における鉄過剰症に対する治療法はdeferoxamineが唯一の治療薬であり,大量の持続点滴又は持続皮下注による投与が有効とされている。しかし患者に対する負担が大きく長期間にわたり投与することは困難である。われわれは続発性ヘモクロマトーシスを発症した骨髄異形成症候群,再生不良性貧血およびサラセミアの3例に対しdeferoxamine 500 mgを1日1∼2回皮下注投与を長期間続けることにより血清ferritin値を低下させヘモクロマトーシスの進行を阻止することができた。1例では肝CT値も低下した。慢性貧血疾患に対する長期間の除鉄療法として経口剤が実用化されていない現在,1日1∼2回deferoxamineの皮下注療法は最もコンプライアンスが得られ易く有用な方法と考えられる。