臨床血液
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37 巻, 4 号
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臨床研究
  • 松田 功, 石山 泰二郎, 久武 純一, 小池 道明, 友安 茂, 鶴岡 延熹
    1996 年 37 巻 4 号 p. 275-279
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
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    Waldenström's macroglobulinemia(以下WM)と考えられる患者において免疫グロブリンH鎖(以下Ig (H))遺伝子再構成を検討した。Ig (H)遺伝子再構成は,7例中3例に認められた。Ig (H)遺伝子再構成を認めた症例では,認めなかった症例と比べ,CD19, CD20陽性細胞の比率が高かったが,血清IgM値は3 g/dl以下の症例が2例含まれていた。一方,Ig (H)遺伝子再構成を認めなかった症例では,認めた症例に比較し,骨髄B細胞数は少なかったが,逆にIgMは高い値(4例とも3 g/dl以上)を示した。WMの骨髄単核球のIg (H)遺伝子再構成は,IgM値とは相関せず骨髄単核球中のB細胞量との関連が示唆された。
  • 石原 重彦, 原 純一, 多和 昭雄, 河 敬世
    1996 年 37 巻 4 号 p. 280-287
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    本邦における慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)の実態と顆粒リンパ球増多症(GLPD)へのEBウイルスの関与の有無を知る目的でアンケート調査を行った。CAEBV 17例中9例で合併症としてGLPDなどのリンパ網内系疾患が観察され,すでに死亡している9例中6例の死因がリンパ網内系疾患であった。一方,GLPD 72例中43例がCD3陽性で,27例がCD3陰性であった。CD3陰性群では7例中6例で,陽性群でも4例中1例で末梢血単核球中にEBVDNAが検出された。このようにCAEBVから種々のリンパ増殖性疾患が続発するが,CAEBVと呼称できる病期を認めないGLPDにもEBVDNAが検出されうる。EBウイルスは種々の増殖性疾患の発症に関与するが,EBV陽性リンパ増殖性疾患という共通の表現型をとる場合でもその過程にはCAEBVと呼称できる病期を含む場合と含まない場合のあることを示唆する。
  • 岩井 しのぶ, 高梨 美乃子, 井出 武夫, 津久井 和夫, 上田 賢弘, 中島 一格, 田所 憲治, 十字 猛夫
    1996 年 37 巻 4 号 p. 288-296
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    骨髄再構築のための造血幹細胞の源として臍帯血が注目されるようになり,近年,小児の兄弟間臍帯血移植の成功例が報告されている。臍帯血が造血幹細胞移植に用いられるのは,出生時にはかなりの数の造血前駆細胞が末梢循環に存在することによっている。われわれの得た結果では,各臍帯血検体の採血量,細胞数,造血前駆細胞数が検体間で非常に大きく異なっていた。検討した40検体のうち,61 ml以上の採血量があったものは7例で,それらには1.8 (±1.0)×105 CFU-GMもしくは6.0 (±4.8)×108の有核細胞が含まれていた。ABO/Rh血液型判定,感染症マーカーのスクリーニング,HLAタイピングなどの各種検査には全血で10 mlを要し,さらに血漿と細胞は将来の検査に備えて凍結保存した。採血量が70 mlを越える臍帯血は体重約20 kgの小児に移植を行うのに十分なCFU-GMを有していた。現在,インフォームドコンセントを得た母親と産婦人科のスタッフの協力によって臍帯血バンク計画を進めている。
  • —BLK88プロトコールの治療成績—
    日比 成美, 藤原 史博, 橋田 哲夫, 松村 隆文, 東道 伸二郎, 澤田 淳, 今宿 晋作
    1996 年 37 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    1987年から1994年の7年間に経験した10例の小児B細胞性悪性リンパ腫および白血病(B-NHL stage I&II 6例,stage III&IV 2例/ALL 2例)について,BLK88プロトコールで治療した。BLK88はHD-CPM (1,200 mg/m2), HD-MTX (1,000 mg/m2)にVCR, ADR, あるいはAraCを併用し,三者髄注による中枢神経再発予防を行い,全経過24週(B-ALLでは36週)で終えるプロトコールである。その結果,stage I&IIの6例のうちstage IIの1例が経過中に再発したが,ALLを含むstage III&IVの4例は全例が無病生存を維持している。これに対しhistorical controlのstage III&IVの4例は全例が再発していた。BLK88による副作用として,好中球減少症,肝障害が認められたがいずれも一過性で,全例治療スケジュールに遅れることなく治療を完遂することが出来た。BLK88は小児期のB-NHL/ALLに対し有用な治療プロトコールと考えられた。
  • 小林 政英, 矢野 邦夫, 藤澤 紳哉
    1996 年 37 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    慢性貧血における鉄過剰症に対する治療法はdeferoxamineが唯一の治療薬であり,大量の持続点滴又は持続皮下注による投与が有効とされている。しかし患者に対する負担が大きく長期間にわたり投与することは困難である。われわれは続発性ヘモクロマトーシスを発症した骨髄異形成症候群,再生不良性貧血およびサラセミアの3例に対しdeferoxamine 500 mgを1日1∼2回皮下注投与を長期間続けることにより血清ferritin値を低下させヘモクロマトーシスの進行を阻止することができた。1例では肝CT値も低下した。慢性貧血疾患に対する長期間の除鉄療法として経口剤が実用化されていない現在,1日1∼2回deferoxamineの皮下注療法は最もコンプライアンスが得られ易く有用な方法と考えられる。
症例
  • 脇田 充史, 小松 弘和, 坂野 章吾, 安藤 美智代, 仁田 正和, 高田 濶壽, 御供 泰治, 上田 龍三
    1996 年 37 巻 4 号 p. 311-316
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    母子に発症したMyelodysplastic syndrome (MDS)で,1例には染色体分析において45XY, -7を認めた症例を経験した。症例1: 60歳女性で眩暈,鼻出血で発症し,約11カ月の経過で肺炎により死亡した。症例2: 22歳男性で症例1の実子。発熱で発症し皮膚,口腔粘膜の感染を繰り返し,約13カ月の経過で肺炎のため死亡した。2例ともに末梢血および骨髄所見からMDS (Refractory anemia with excess of blast)と診断し,いずれの症例においても末梢血の汎血球減少,骨髄の赤芽球過形成と赤芽球系に顕著な異形性を認めたことや臨床的に反復する感染症を呈し重症肺炎が直接死因となったことが共通して認められた。これらの臨床症状はmonosomy 7 syndromeとして報告されている病態とも似ていることから遺伝的素因にもとづく母子発症である可能性が考えられた。monosomy 7の関与したMDSの家族内発症は報告が少なく興味深い症例と考えられたので報告した。
  • 川東 靖子, 古川 良尚, 太良 光利, 新名 清成
    1996 年 37 巻 4 号 p. 317-322
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は63歳女性。主訴は呼吸困難,発熱。抗生物質投与にても軽快せず呼吸不全をきたした。気管支肺胞洗浄液にカリニ原虫嚢子を認めカリニ肺炎と診断した。カリニ肺炎は細胞性免疫の低下に伴い日和見感染として発症する事が知られているが本症例では悪性腫瘍,HIVは認めず,抗HTLV-I抗体が陽性であった。しかし血液学的所見,臨床所見によりATLの診断は困難であったが,サザンブロット法にて既にHTLV-I感染細胞はモノクローナルな増殖を示していた。HTLV-Iキャリアーにも日和見感染を合併する事が報告されている。これらの症例では比較的短期間に明らかなATLへ移行している症例が多い。日和見感染を起こしたキャリアーでのATL発症前のHTLV-I感染細胞の増殖様式についての検討は少ないが,モノクローナルに増殖していた症例も報告されている。われわれの症例でもキャリアー状態で既にモノクローナルな増殖を示しており日和見感染を起こしたキャリアーは注意深く経過を追う必要があると考えられた。
  • 菊野 薫, 後藤 茂正, 岩崎 寿代, 五月女 隆, 竹下 明宏, 長村 文孝, 渡辺 純一郎, 辻村 秀樹, 井関 徹, 米満 博
    1996 年 37 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例1は,36歳の男性で1989年4月にAPLと診断,BHAC-DMP, BHAC-AMPにて加療されていた。1990年1月滲出性中耳炎と診断されたが難治性であった。6月左顔面神経麻痺が出現。MRIにて左側頭骨内に腫瘤を認めた。症例2は,24歳の女性で1989年7月にAPLと診断,BHAC-DMPにて治療されていた。1990年5月滲出性中耳炎の診断を受けた。7月再発を認めAra-C大量療法にて再寛解となった。10月中耳炎の増悪を認めた。2例とも中耳滲出液細胞診にて白血病細胞が確認された。治療はAra-C大量療法のみでは局所の再発を防げなかったが,Ara-C大量療法と両側頭骨への放射線療法は有効であった。症例1は1992年9月再発にて死亡したが,顔面神経麻痺と中耳炎の増悪はみられなかった。症例2は寛解を得,1992年8月まで維持療法を続け,生存中である。白血病の経過中に難治性の滲出性中耳炎を合併した場合は,積極的に中耳滲出液細胞診を行うべきと思われた。
  • 伊従 秀章, 廣野 晃, 小林 尚明, 石戸谷 尚子, 赤塚 順一, 菅野 仁, 藤井 寿一, 三輪 史朗
    1996 年 37 巻 4 号 p. 329-334
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    〔症例〕平成2年6月生まれの男児。家族歴では父親に非球状性溶血性貧血がある。出生時よりHb 11.9 g/dlと貧血を認め,日齢2には溶血発作を認めた。その後は貧血は代償され,大きな溶血発作も3歳までなかった。〔検査所見〕精神運動発達は正常で,神経学的異常所見はない。血液検査ではHb 11.0 g/dl前後,reticulo 3-6%, 塗抹標本でtarget cellを認める。赤血球浸透圧抵抗やや増大,Heinz小体生成試験陽性。患者の赤血球内還元型グルタチオン(GSH)濃度は,4.4 mg/dl RBC(正常値:63.9±9.6)と著明に低下していた。赤血球内酵素活性では,グルタチオン合成酵素(GS)活性が0.03 U/gHb(同:0.38±0.08)と低下しており,GS異常症と考えられた。なお患者赤血球ではグルタチオンS-転移酵素活性も0.57 U/gHb(同:6.65±1.20)と低下していた。〔考案〕GS異常症はこれまでに全世界で約30家系の報告があるが,本邦ではこれまで報告がなく,本例が本邦における第1例と考えられる。
  • 加納 正
    1996 年 37 巻 4 号 p. 335-339
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫患者において,その血清中にL鎖のタイプの異なる2つのM成分(double gammopathy: IgA-κ, IgA-λ)が証明された。2重蛍光抗体法によって同一の骨髄腫細胞に,これら2つのM成分の産生がみられることを確認した。すなわち,κ鎖陽性細胞の80%にλ鎖が証明された。さらに,これら2重標識細胞はα鎖も陽性であり,2つのM成分の産生細胞は単クローン性であることが判明した。治療により2つのM成分が平行して減少した事実ともよく符合する。本症例の骨髄腫細胞では,アイソタイプ排除(isotypic exclusion)の原則が成立しない。本症例では化学療法によって導入された部分寛解期間(plateau phase)に,interferon-α2aを単独投与して完全寛解(免疫固定法による血清,尿中M成分の消失,骨髄中形質細胞数2%以下)を導入し得た点が注目される。この事実の意味するところは大きく,化学療法抵抗性の骨髄腫症例の少なくとも一部に対してinterferon-α2aが有効であることを示しているからである。
  • 平瀬 伸尚, 宮村 知也, 石倉 英樹, 油布 祐二, 西村 純二, 名和田 新
    1996 年 37 巻 4 号 p. 340-345
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳,男性。平成6年12月下旬,発熱,食欲不振出現。近医にて,急性腎不全,胸水貯留を指摘,プレドニソロン大量療法で改善したが,γ-グロブリン上昇,M蛋白を認め,精査加療目的にて平成7年3月下旬当科入院。入院時末梢血にてヘモグロビン8.7 g/dl, 白血球数5,300/μl, リンパ球様異常細胞11%, IgMは8.355 mg/dl。骨髄にてリンパ球様異常細胞を8.6%認めた。染色体分析では,骨髄,末梢血ともに46, XY, t(11;18)(q21;q21)を認め,末梢血異常細胞の表面形質解析ではIgM-κ, CD19, 20陽性,CD5, 10陰性であった。悪性リンパ腫の所見は見い出せず,原発性マクログロブリン血症と診断。t(11;18)(q21;q21)の染色体異常は現在までに6例が報告されており,表面免疫グロブリン,CD19, 20陽性,CD5, 10陰性の節外性のsmall lymphocytic lymphomaやMALTリンパ腫に見られるが,本症例を含め,比較的成熟したB細胞性リンパ系腫瘍に特徴的な染色体異常と考えられた。
  • 大本 晃裕, 河野 通史, 安川 香菜, 松山 隆治
    1996 年 37 巻 4 号 p. 346-351
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は69歳男性。平成6年2月より発熱,腹水,下肢浮腫がみられるもその原因は精査によっても不明であった。10月第3頚椎の病的骨折を認め手術したところ形質細胞腫と判明した。術後高アンモニア血症による傾眠傾向に陥り,当科転科となった。骨髄では,骨髄腫細胞の増加を認め,IgA-λ+IgD-κ型のbiclonal型多発性骨髄腫と診断した。腹水は週に2ないし4リットルと大量に産生されるが頻回の腹水細胞診検査でも腫瘍細胞は見い出せず,また腹水中IL-6値は2,440 pg/mlと異常高値を呈し骨髄腫に関連したものと考えられた。また高アンモニア血症も骨髄腫関連と考えられた。頚椎への放射線照射に加え,MP療法,インターフェロンα療法,VAD療法,サイクロフォスファマイドの腹腔内注入(2回)を試みたがいずれも腹水の貯留や高アンモニア血症に対しては明らかな効果はみられなかった。非常に興味のある臨床経過をとった多発性骨髄腫の1例を経験したので報告する。
  • 柿沼 由彦, 佐々木 道子, 杉田 記代子, 上牧 勇, 金子 隆, 辻 敦敏
    1996 年 37 巻 4 号 p. 352-357
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は,2歳過ぎまで顔色良好であった男児で,2歳2カ月時に貧血を主訴に入院した。患児に外表奇形は認めず,常用する薬剤歴もなかった。入院時のヘモグロビン値は3.7 g/dlと高度な正球性正色素性貧血がみられ,骨髄所見は赤芽球系細胞一系統の著しい減少を認めた。骨髄細胞に形態異常はなく,基礎疾患およびパルボウイルスB19などの感染も認めず,後天性特発性赤芽球癆と診断した。メチルプレドニゾロンパルス療法およびプレドニゾロン1 mg/kg/日の持続投与では効果が得られなかったが,γ-globulin大量療法(400 mg/kg/日,5日間連続投与)は著効しヘモグロビンは2日で1 g/dlの速度で増加した。γ-globulin大量療法開始20日目にはヘモグロビン値10 g/dlを越え,PRCAは回復した。赤芽球癆発症2年6カ月の現在,患児に貧血は認めず,他の血液学的疾患の合併も見られていない。近年,赤芽球癆の免疫抑制療法の代表としては,シクロスポリン療法の有効性が報告されている。しかし,γ-globulin大量療法が著効する症例もあり,PRCAの治療法として試みる価値のある治療法と思われる。
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