臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
症例
自己瀉血により重篤な鉄欠乏性貧血をきたしたfactitious anemia
中前 博久日野 雅之太田 健介鈴木 賢一青山 泰孝酒井 宣明阪本 親彦長谷川 太郎山根 孝久巽 典之
著者情報
ジャーナル 認証あり

1998 年 39 巻 3 号 p. 216-220

詳細
抄録
症例は22歳,未婚女性,看護学生,低色素性貧血ならびに不明熱にて入院となった。入院後,鉄欠乏性貧血と診断し,鉄剤の投与を行っていたが周期的に貧血の進行がみられた。特に外泊後に急激な貧血の進行が認められていたことより,われわれはfactitious anemiaを強く疑い,テレビモニターでの監視ならびに所持品検査を行ったところ,患者病室のロッカーならびに自宅より多数の注射器,注射針および血液の入ったボトルが発見された。以上より本症例をfactitious anemiaと診断した。患者は自己瀉血を認め,心療内科医のカウセリングにより貧血の改善傾向がみられたが,退院6カ月後に通院しなくなった。十分量の鉄剤投与に反応を示さない極度の慢性低色素性貧血患者にはfactitious anemiaを考慮する必要がある。
著者関連情報
© 1998 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top