抄録
本分析は,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes; MDS)患者に対するazacitidine (AZA)の費用対効果を評価することを目的として実施した。本分析では,高リスクMDS患者の予後に関するマルコフモデルを構築し,支持療法(best supportive care; BSC)のみを行うBSC療法を比較対象として,高リスクMDS患者にAZAを投与した場合の費用対効果を評価した。費用は直接医療費を評価対象とした。効果指標は質調整生存年(quality-adjusted life years; QALY)を用いた。AZAの費用対効果の評価は1 QALYあたりの追加費用を表す増分費用対効果比によって行った。すなわち,AZA療法の増分費用は183万円,AZA療法の増分効果は0.353 QALYと算出され,AZA療法のBSC療法に対する増分費用対効果比は1 QALYあたり約518万円と算定された。この増分費用対効果比は一般に許容される限界値を下回っているため,わが国でのAZA治療の費用対効果は良好であると結論された。