臨床血液
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特集:臨床血液学 ―最新情報と今後の展望2017 (赤血球系疾患)―
PNHの分子遺伝学,生化学と生物学
木下 タロウ
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ジャーナル 認証あり

2017 年 58 巻 4 号 p. 353-362

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抄録

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は,X染色体遺伝子であるPIGAに体細胞突然変異を起こしてGPIアンカーを欠損した造血幹細胞がクローン性に拡大し,発症する。補体から細胞を保護するGPIアンカー型タンパク質であるDAF/CD55とCD59の欠損により,血管内溶血と血栓を引き起こす。これら2主徴は,抗C5抗体であるエクリズマブによって抑えることができる。第3の主徴である骨髄不全は,自己免疫性であり,GPIアンカー欠損クローンの拡大に関与する。エクリズマブの働きで補体による溶血を免れたPNH型赤血球上には,3型補体レセプターのリガンドであるC3由来断片が時間とともに蓄積し,脾臓マクロファージによる血管外溶血を起こす。日本人の3%は,エクリズマブ結合部位近傍のアミノ酸を変化させる遺伝子多型を持ち,PNH症例の3%がエクリズマブに不応である。これらの課題を解決する新たな治療薬の開発が望まれる。

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© 2017 一般社団法人 日本血液学会
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