臨床血液
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Symposium 2
骨髄異形成症候群における赤血球造血障害
岩間 厚志
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2018 年 59 巻 6 号 p. 793-797

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抄録

無効造血は異形成を伴う造血細胞の異常な増殖と病的なアポトーシスにより特徴付けられる骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome, MDS)の表現系の一つであり,特に赤血球造血障害による貧血は患者のQOLの低下の要因となる。近年,赤血球造血異常のメカニズムに関して新しい知見が報告され,徐々にその実態が明らかになりつつある。5q−症候群では,リボソーム合成障害を起点としたp53-S100a8/S100a9-TLR4経路の活性化の関与が明らかにされた。また,鉄芽球の増加を伴うMDSにおいては,スプライシングに関わるSF3B1遺伝子の変異が高率に認められ,スプライシング異常による遺伝子の発現低下や異常蛋白の出現が病態形成に関与するものと考えられる。さらに,ヒストン修飾に関わるポリコーム群遺伝子の遺伝子異常,特にH3K27メチル化に関わるEZH2の変異や欠損,スプライシング異常も赤血球造血障害に関与することが示唆されている。本稿においては,MDSにおける赤血球造血異常の最新の知見を紹介し,その意義について考察する。

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© 2018 一般社団法人 日本血液学会
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