2020 年 61 巻 11 号 p. 1584-1589
74歳男性。帯状疱疹のため当院を受診した際,CTで右胸部腫瘤と腋窩リンパ節腫大,多発肺結節を指摘された。胸部腫瘤および腋窩リンパ節生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された。肺病変は気管支鏡下生検で二次性アミロイドーシスと診断され,唾液腺生検でSjögren症候群(SjS)の診断に至った。以上からSjS合併乳腺原発DLBCL,Stage IIEと診断した。R-THP-COP療法6コースと髄腔内化学療法および放射線照射を行い,完全寛解となった。乳腺原発リンパ腫は乳腺腫瘍全体の0.5~1%,節外性リンパ腫の1~2%とまれな疾患であるが,大多数は女性例であり,男性例は自験例を含めて17例の報告に留まる。女性化乳房やホルモン療法を伴う例が9例を占めるが,SjSとの合併例の報告はない。自己免疫疾患と悪性リンパ腫の進展においても興味深い症例と考えられる。