2022 年 63 巻 6 号 p. 573-579
1950年代に開発されたthalidomideはその深刻な催奇形性により市場からの撤退を余儀なくされた有名な睡眠薬であるが,多発性骨髄腫への優れた治療効果を有することから再評価を受け,再び認可をされている。Thalidomideがいかなる作用機構であるかは長年にわたり不明であったが,筆者らによりthalidomide標的因子であるユビキチンリガーゼ・セレブロン(cereblon, CRBN)が発見され,またそれが近年開発されていたthalidomide誘導体であるlenalidomideやpomalidomideといった強力な抗がん剤の治療薬の標的でもあることが判明している。現在では,セレブロンを標的とする薬剤をセレブロンモジュレーターと総称しており,その作用機構についてはかなり明らかになってきている。本稿では,主に筆者らがこれまでに成し遂げたセレブロンの発見やその展開,そして海外研究者らによる成果などについても概説したい。