2022 年 28 巻 p. 469-474
2017年長野県裾花ダムでは,堆砂と沈木が放流管内に流れ込みゲート操作の支障が生じた.同事例は洪水調節用の常用洪水吐き敷高まで達した堆砂進行に起因しており,同様の状況は今後他ダムにおいても生じうる.そこで本研究では,常用洪水吐きの機能確保のための土砂・沈木対策の提案に向け,堆砂が放流管呑口に接近した場合のダム運用と呑口周辺の流れ場,堆砂形状の変化特性を明らかにすることを目的としている.現地のダム貯水位およびゲート開度と堆砂形状の分析結果をもとに,貯水位および放流量と放流管呑口前面の堆砂の局所洗掘の関係を整理するとともに,堆砂進行度に対する沈木の駆動力となる呑口周辺の流れ場の変化を水理模型実験により把握した.これより,今後の堆砂・沈木対策に向け,放流管内へ沈木を引き込む流れの影響範囲の把握やゲート運用による堆砂形状管理につながる知見が得られた.