2022 年 28 巻 p. 97-102
河川堤防の強化工法の1つに矢板の設置が挙げられるが,現状その効果については不明な点が多い.そこで,本研究では河川堤防のパイピング破壊のメカニズムおよび矢板の効果解明を目指し,浸透流解析を実施した.その結果,堤体下のパイピング孔の進展を模擬した浸透流解析から,堤外からパイピング孔先端に向けて流速の大きな浸透流が集中することが,パイピング孔貫通による破堤のトリガーの1つであることが明らかになり,矢板の設置によりこの作用を防ぐ効果があることが分かった.また,繰り返しの水位上昇を想定した浸透流解析から,高水位の間の水位低下時に水位が十分に低下しない場合には,次の高水位時にパイピングの危険性が高まることが示唆された.今後,実河川などにおいて矢板の効果を評価する際には,出水時の水位波形全体を考慮し,漏水流量(流速)を用いて検討を行う必要がある.