2023 年 29 巻 p. 37-42
北海道東部の常呂川下流に位置する上川沿水位・流量観測所は浮子観測を行う橋梁が高水敷冠水時に使用不可能となるため,代替策として高水敷冠水後は約9km下流の河口付近の橋梁で浮子観測を行っている.しかし,代替地点は,本来の観測地点との距離が遠いだけでなく,河口に近いため潮位の影響を受け正確な流速・流量が観測できない等の問題があった.本稿では,これらの問題を解決するため,無人で夜間も連続して撮影可能な遠赤外線カメラの映像を画像処理型流速測定法(以下,画像解析)で解析する手法並びに,ADCP曳行観測,H-ADCPを用いる手法を実施し,その手法の組合せ等も加味して,流量算出手法の検討を行った.画像解析では一般的に用いられる更正係数0.85を使用すると当観測所では流量が20~30%程過小に算出されるが,対数分布則を用いることで画像解析,H-ADCP共にADCPとの差は数%程度となった.また,観測水位毎のksは横断方向にも時系列的にも変化していることが確認され,流量算出においては,この点も考慮する必要があることが明らかとなった.