2023 年 29 巻 p. 419-424
令和2年7月豪雨において,人吉市では球磨川等の外水氾濫により甚大な被害が生じた.一方で,内水氾濫によって避難行動が制限されていたことが指摘されている.今後,人吉市では,外水氾濫前に発生している内水氾濫時の住民の安全な避難が特に重要となる.このため,内水氾濫の状況やその機構を明らかにすることが第一義的に重要な課題である.
本研究では,令和2年7月豪雨時の人吉流域を対象に,降雨と地形を詳細に取り込んだ内水氾濫解析を行い,外水氾濫前の豪雨や市内を流れる水路網からの内水氾濫によって道路が浸水し,避難が難しい状況になっていたことを明らかにした.また,内水氾濫と流域水収支分布の分析から,上流域での貯留等が下流市街地の被害軽減に有効であることを示した.その上で,各地域の治水的課題の解決に合わせて,流域治水を進める上で重要となる貯留対策を検討する意義を述べ,有効な貯留空間を見出すために流域水収支分布図の作成とその活用が,地域の人々の理解と協働にとって重要となることを示している.