2023 年 29 巻 p. 467-472
耳川水系において水力発電専用ダムを管理している九州電力㈱では,台風に伴う出水の際,事前にダム水位を低下させ,上流から流入する土砂をダム下流に通過させる「ダム通砂運用」を下流3ダムで実施するとともに,最上流の上椎葉ダムなどで,事前放流操作による治水協力を行っている.これらの操作の開始判断には降雨予測が鍵であり,特に貯水容量の大きい発電ダムでは,可能な限り発電放流を行いつつ確実かつ安全に事前放流水位に低下させることで利水容量の有効活用を図ることが重要となる.このため,早めの出水予測が必要となる.本研究では,ダム通砂運用開始と事前放流実施両面の意思決定における長時間アンサンブル降雨予測の活用可能性について検証を行った.その結果,ダム通砂運用においては,見逃しによる治水安全度の悪化と空振りによる利水リスクの低減の両面から活用方法の可能性が示された.また,上椎葉ダムの事前放流においては,安全に事前放流水位へ低下させ洪水調整容量を確保する治水協力の確実な履行と無効放流の低減を図ることができ,ダム運用高度化を実現可能であることが確認された.