2023 年 29 巻 p. 485-490
ダムの事前放流における実施判断に長時間アンサンブル降雨予測を用いることの有効性を確認するため,各ダム固有の条件を正確に反映させたダム運用シミュレーションを行った.実際に大雨となった事例に加え,予測が過大で結果的に空振りとなった事例も対象とした.アンサンブル予測の利用に際して雨量の大きい順に上位・中位・下位で整理し,事前放流の開始判断は上位予測で,目標水位は下位予測で決定することにより,治水・利水の両方のリスクに対応した運用が可能であることを明らかにした.平成30年7月豪雨のように降雨期間が長い場合には長時間予測であることの有効性が大きく,予測が空振りとなった場 合は下位予測を使うことで水位が回復しないリスクを低減可能であった.発電能力が高いダムの場合は,無効放流とならないように放流量を発電最大使用水量に抑制することにより増電につながることを示した.