2023 年 29 巻 p. 497-502
既往研究で予測時間の長い雨量予測を用いることで,治水ダム等では洪水前の水位低下がより効果的に実施できることが示されている.本研究では,長時間アンサンブル降雨予測を用いた事前放流操作の検証として,既往研究では検討が不十分であった利水容量の回復可能性(利水リスク)に着目して検討を行った.上位,中位,下位の3パターンについて,5日間総雨量の全予測で見ると下位または中位予測が実績雨量に近いという結果になった.回復しない可能性がある過大予測(51位>実績)は最大15%程度含まれていたが,ほとんどが51位-10mm以内であり,その程度は限定的であった.更に,上位予測において5日先までに基準雨量超過があった際に,下位に基づき水位低下量を設定して早期事前放流を行うと仮定し,下位予測総降雨量(5日間)と実績総降雨量(10日間)とを比較した.回復しない可能性のある,下位予測>実績となったケースは,割合としては数%程度であった.下位予測に基づき早期事前放流を実施しておけば回復しない可能性は小さく,事前放流における長時間アンサンブル降雨予測活用の有効性が示された.