2024 年 30 巻 p. 453-458
本研究が対象とする斐伊川は,土砂移動が活発なため下流域に天井川区間を有し,かつ,水はけの悪い宍道湖を有する等の治水上の課題を抱えている.本研究では斐伊川の流域治水を具体的に検討する手法として,実洪水(令和3年7月洪水)時の観測水面形時系列に基づき降雨-流出,河道での洪水の流れ方,それに応じた土砂移動を流域一体で解析する洪水流・河床変動予測モデルを構築した.計画降雨分布を外力条件として計算した場合,洪水ピーク時には各流域で表面流が多く発生することを推定し,計画降雨時に対する本川・各支川の流量分担や,計画高水位を超過しないために必要な上流域での貯留量を明らかにした.土砂については,計画降雨時に斐伊川放水路へ約20万m3以上の土砂が流入することが推定され,斐伊川から流入する土砂が,放水路が合流する神戸川に影響を及ぼす可能性が高いことを明らかにした.今後,中海・宍道湖や神戸川も含めた斐伊川水系全体の水・土砂収支を把握することが必要であることを示した.