2024 年 30 巻 p. 5-10
停滞水域である多々良沼は,河跡湖であり最大水深約3mの浅い沼であった.1988年から1990年にかけて沼中央部の浚渫が行われ,最大水深は約7mになった.筆者らのこれまでの調査において,浚渫箇所では,2020年から2022年の夏季に水温成層が形成され,底面付近において貧酸素水塊が発生していた.本研究では,停滞水域である多々良沼内部の水質を再現し,沼中央部の浚渫窪地の埋め戻しが水質に及ぼす影響について検討することを目的とした.現地観測は,多項目水質計を用いて1年に4回行った.数値計算では,沼底の地形変化の影響を明らかにするために,沼中央部の浚渫箇所を埋め戻した計算を行った.その結果,現地観測において,沼中央部の表層と底層の密度差は夏季に大きく,冬季に小さいことがわかった.さらに,浚渫箇所を埋め戻した場合の計算より,浚渫箇所の埋め戻し深さが大きくなるにつれて,水温とDOどちらも沼中央部の値は上昇した.このことから,多々良沼において浚渫箇所の埋め戻しは,水温成層や貧酸素状態の解消につながることが示唆された.