河川技術論文集
Online ISSN : 2436-6714
TimesNetを用いた洪水予測精度の向上の検討
木村 延明皆川 裕樹福重 雄大吉永 育生馬場 大地
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2024 年 30 巻 p. 611-616

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抄録

本研究は,時系列データを対象に,機械学習予測モデルの精度向上を目指して,連続データの周期的な特徴を効果的に抽出できるTimesNet(2023年4月発表)を用い,類似的な波形が多く見られる洪水イベントのデータに適用したものである.従来から連続データの予測に利用される長・短期記憶(LSTM)や類似データを集めて構築された事前学習モデルの予測結果との比較を行い,TimesNetの優位性を確認する.水文・気象条件が比較的類似する九州地方の一級河川から収集された洪水イベントの雨量・水位を用いた.水位データに周期性が認められる六角川水系妙見橋と周期性が弱い番匠川水系番匠橋に各々適用した結果,前者では,Leadtime(LT)=6hまで,1%~10%の誤差の改善がみられたものの,後者では,他モデルに比べて,予測精度が低下した.他の地点を含む23カ所の予測結果では,イベント数が10個以上で,観測値に対するピーク水位差とタイムラグについて,LT=3h,6hでTimesNetの優位性が示された.さらに,六角川水系妙見橋から上流域のデータを用いた場合に,TimesNetのタイムラグを1h削減することができた.

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© 2024 土木学会
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