2025 年 31 巻 p. 235-240
河川堤防の決壊により引き起こされる甚大な被害を軽減するために,河川土工マニュアルでは堤体材料の粒度分布と締固め度に適性範囲が定められている.堤体材料によって侵食特性は異なるため,適性範囲内での堤体材料の違いが決壊プロセスに及ぼす影響を把握することは不可欠である.一方,耐侵食性を評価する際に引張破壊応力が用いられることがあるが,堤防の侵食特性と引張破壊応力の関係について十分な知見が得られていない.本研究では,粒度分布,締固め度が異なる堤体土を用い,堤防の越流侵食に関する水理模型実験,および引張破壊試験を実施した.その結果,細粒分含有率,および締固め度の上昇が耐侵食性を向上させることを示した.また,引張破壊応力を求め,実験結果と比較することで,締固め度90~95%の範囲では堤防の耐侵食性の評価と引張破壊応力に相関があることを示した.