2025 年 31 巻 p. 463-468
本研究では,水田の洪水調節機能について,田んぼダムの洪水調整機能が評価できる非構造格子氾濫解析モデルにより定量的に把握し,また水田貯留を実施したときの水稲に対する被害を想定した.田んぼダムによる洪水貯留効果は水田面積に応じて変化するため,農林水産省が公開している「農地の区画情報(筆ポリゴン)」ごとに格子を作成し,田んぼ一筆ごとの流出量や湛水深,湛水継続時間などの水理諸元を詳細に把握できるようにした.構築したモデルを九頭竜川水系足羽川流域に適用した結果,計画規模の降雨に対して本川・支川ともにピークカット効果および下流氾濫域の浸水低減効果はほぼ確認されなかった.ただし,5,10年確率規模であれば,支川流量の僅かな低減が見られた.また,水稲被害については,田んぼダム実施時の方が,未実施時と比べてより多くの被害を受けることが確認された.この結果,本流域においては,田んぼダムが必ずしも治水効果を発揮するわけではなく,そのことを理解した上で田んぼダムの洪水調節以外の多面的な効果を考慮しながら政策推進を図る必要性が示唆された.