2025 年 31 巻 p. 7-12
筑後川水系では平成29年7月の甚大な豪雨災害により,大規模な出水が発生した.大規模出水が及ぼす生態系への影響や,その後の回復過程を明らかにすることは,河川管理を行う上で重要である.本研究では,環境DNA定量メタバーコーディング法を用いて,筑後川水系における出水後の魚類相回復過程についてモニタリングを行った.魚種数及び環境DNA濃度は出水直後に被害の少ない対照区支川で本川や被災地支川よりも高く,その後本川や被災地支川で回復する傾向が見られた.構成比に着目したSimpson多様度指数は,出水後に流域全体で高く,その後は低下する傾向が見られた.これにより,出水直後は下流へ魚類が押し流されたことや,出水の影響の少ない区間へと移動し,一時的に魚種間の生物量の差が減少したことで多様度が高くなったことが考えられた.さらに,その後各魚種が元の生息場に戻ることで,優占種の影響が増大し,多様度が低下したことが示唆された.NMDSの結果,一部の被災地支川の魚類群集構造が異なる傾向にあり,被災地支川での河川環境や改修工事等により,魚類の生息が困難となったことが示唆された.