本論文は、2011 年の東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市の学校での津波防災教育を事例とし、自然災害の記録をその災害で被災した学校での防災教育にどのように活用し、次の災害に備えることに役立てられることができるかについて検討した。2018 年に実践された津波防災教育プログラムの開発に至る背景と実践についての検証を通じて、被災地の小学生がどのタイミングでどういった条件が考慮されると、地域の実際の津波記録を学習することが可能になるのかについて考察した。授業で扱う教材には、地域の津波記録の標識や同学校の児童が2012 年から2014 年に取り組んだ地域の津波被害からの復興の進捗を記録した「復興マップ」が活用された。また、復興から防災へと教育内容が大きくシフトしたきっかけは、東日本大震災から5 年後に発生した津波警報の発表を伴った福島県沖地震であることも確認された。災害経験を教育でどのように扱うこと ができるかについての議論に一つの示唆を与えることができたのではないか。