抄録
本論文は、災害の実体験がない子どもたちが、被災者の災害体験を「自分ごと」として考える
ための一つの手法として、阪神・淡路大震災の実体験を基にしたお話教材を活用した小学 4 年生 の授業について分析したものである。使用した教材は、震災で我が子を亡くしたお母さんについ て描いた、神戸市の防災教育副読本「しあわせはこぼう(小学校4・5・6年生用)」に掲載さ れている「あの子は天使です」と、その後日談を著者らが独自に教材化した「あっこちゃんのは さみ」である。
これらの教材を用いた授業を通して、子どもたちの学びの深まりや学習への主体性が生まれた。 授業の内容と児童の反応を分析すると、そのポイントは、「お話の理解を深めるための課題設定」、
「気持ちを色で表現する「♡」の手立て」、および、「被災前後のストーリー」であった。これら はいずれも、子どもたちがお母さんの気持ちを主体的に想像し、自分ごとへと置き換える役割を 果たす点で重要であることがわかった。