防災教育学研究
Online ISSN : 2436-6315
Print ISSN : 2435-9556
外国人住民による防災活動の実践化プロセス
-東日本大震災を経験したフィリピン出身女性とのインタビューより-
菊池 哲佳
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2022 年 3 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

本研究は、日本の災害で被災した経験のある外国人住民を対象として、防災活動を実践化するプロセスを明らかにすることを目的とした。特に、災害時の外国人住民とその家族や地域住民の間の社会的相互作用の中で、防災意識が形成される動きを説明する理論の生成を目指した。2021 年2月に、東北地方に在住するフィリピン出身女性4名の半構成的面接の逐語録をデータとし、修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析を行った。分析の結果、22 の概念が生成され、そのうちからつぎの8つのカテゴリーを見出した。【避難イメージを持ちえないための戸惑い・混乱】【情報や規範によらない、家族の安全を最優先とする行動】【日本人の行動・意見を参考】【マイノリティとしての共感・支援】【被災経験からの学び】【居場所としての日本の確認】【避難イメージの実践化】【外国人当事者としての防災教育の実践化】。日本では外国人住民の増加・定住化の一層の進展が予想されるが、外国人を対象とする防災教育のあり方を考える上で、外国人住民の視点を生かすことの有効性が示唆された。

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© 2022 防災教育学会
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