抄録
自然災害伝承碑は過去の災害記録・教訓を伝える地域密着型の重要なシンボルであ
る。しかし、長期にわたり雨風にさらされることで生じる汚れや風化に伴った判読
性・視認性の低下により人々の関心が薄れるとともに、保存・修復に関する問題も
生じている。そこで、本稿では児童・生徒を対象にフォトグラメトリやひかり拓本
といった空間情報を記録するためのデジタル技術を活用して、災害碑に対する理解
を深める学習プログラムを実施した。3Dデジタルモデルの製作を通じた記録・保存
(デジタルアーカイブ)および碑文の判読性向上の体感を通じて、自然災害伝承碑
に対する興味関心を向上させることができた。また、生徒による議論をもとに考案
された自然災害伝承碑には、将来石碑を建立する時のアイデアが多く散見された。
今後、従来から実施されている避難訓練とデジタル技術を介した自然災害伝承碑を
活用した総合学習を通して、若い世代が歴史自然災害を伝承することの重要性への
理解が進むことを望む。