防災教育学研究
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最新号
防災教育学研究
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 中野 元太, 矢守 克也, 諏訪 清二, ゴータム アパラジータ
    2023 年4 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、ヌワコット郡において実践した教員向け防災教育研修を通して、従来の一方向的ト ップダウン型の教育活動が、参加型防災教育活動へと矛盾を生じさせながらも変容する過程を、 活動理論に基づいて質的かつ量的に説明するものである。同研修の特徴は、外部支援者が防災教 育マニュアルを持ち込み指導するのではなく、当事者である教員が参加型防災教育を導入し、実 践経験を他の教員と共有し、 教員が防災教育マニュアルを執筆することにある。 この手法が、防災 教育支援効果を定着させ、 対象地域の社会に適した新しい教育の導入にもつながることを論じた。
  • 谷川 亘, 井若 和久, 浦本 豪一郎, 上椙 英之
    2023 年4 巻1 号 p. 13-24
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    自然災害伝承碑は過去の災害記録・教訓を伝える地域密着型の重要なシンボルであ る。しかし、長期にわたり雨風にさらされることで生じる汚れや風化に伴った判読 性・視認性の低下により人々の関心が薄れるとともに、保存・修復に関する問題も 生じている。そこで、本稿では児童・生徒を対象にフォトグラメトリやひかり拓本 といった空間情報を記録するためのデジタル技術を活用して、災害碑に対する理解 を深める学習プログラムを実施した。3Dデジタルモデルの製作を通じた記録・保存 (デジタルアーカイブ)および碑文の判読性向上の体感を通じて、自然災害伝承碑 に対する興味関心を向上させることができた。また、生徒による議論をもとに考案 された自然災害伝承碑には、将来石碑を建立する時のアイデアが多く散見された。 今後、従来から実施されている避難訓練とデジタル技術を介した自然災害伝承碑を 活用した総合学習を通して、若い世代が歴史自然災害を伝承することの重要性への 理解が進むことを望む。
  • 佐伯 潤, 板倉 尚子
    2023 年4 巻1 号 p. 25-34
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    避難訓練は、代表的な防災訓練の1つである。教育機関においても、児童生徒が参加して度々実施されているが、その内容については、リアリティの欠如や、実効性に対する不安などが議論の 対象となっている。本論では、避難訓練において、避難誘導を実施して児童生徒の安全確保に努 める教職員を対象とした教育プログラムの設計を検討した。ボトルネック・ベルトと呼ぶ疑似的 に災害時の避難する群集を模倣する資機材を作製し、教職員が児童生徒の視点で避難時の危険を 体験することで、効果的な避難誘導の手法を学習できることを目標とした。設計された教育プロ グラムの実施結果からは、受講をした教職員らが災害時の避難行動の困難さを体験し、また、避 難誘導の要点を学習できたことが判明した。
  • 小柴 佑介
    2023 年4 巻1 号 p. 35-44
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル フリー
  • 川村 教一, 正木 詔一
    2023 年4 巻1 号 p. 45-52
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは、兵庫県北部、円山川で2004年に発生した洪水氾濫による災害を例として、外水氾濫 と内水氾濫の素因を理解させるための野外学習を大学院生に対して実施した。授業後には、沿岸 で浸水しやすい土地と河川の合流点との関係の認識、外水氾濫と内水氾濫についての理解、支川を強く認識するようになり水系についての理解が深まった。また、洪水発生の素因について大学 院生の理解が深まったと考えられる。
  • ―「主体的・対話的で深い学び」めざして―
    岡田 夏美, 矢守 克也
    2023 年4 巻1 号 p. 53-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の学校教育での防災実践において重要視されているのが「主体的・対話的で深い学び」をど のような手法で達成するのか、という視点である。この学びの過程で重要なことは、学びの内容 が、学習者の関心に沿って展開されているかどうかという点でもある。そうした関心をすくいあ げるための一般的な手法として、授業アンケートがある。評価手法でもあるこの方法は、一方で、 調べる者と調べられる者との関係に、一定の権力関係をもたらしてしまう懸念がある。つまり、 回答者側に、評価懸念などの心理的作用が働く可能性である。本研究では、こうした一方向的な アンケートによるバイアスをできるだけ軽減し、より双方向的なやり取りを可能とする手法とし て、メッセージカード方式を導入した。結果として、従来の授業アンケートよりも、メッセージ カード方式の方が、より「多様な視点をもった質問」が増加することが分かった。以上より、授 業本体だけではなくて、そのフォローアッププロセスに、従来の“授業アンケート”ではなく、 より対話的な手法、つまりメッセージカード方式を導入することも、「主体的・対話的で深い学 び」を実現するための方策になりえるとの示唆を得た。
  • ―JICA 本邦研修を契機とした交流の深化―
    小田 隆史, 諏訪 清二, 児玉 美樹, エミン オズダマル
    2023 年4 巻1 号 p. 63-76
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,トルコ共和国の防災教育について,主に教育行政や防災行政機関の連携協働の仕組み, 教員育成研修の視点から明らかにした。日本同様に地震災害のリスクが高いトルコに対してJICA が実施した防災教育に関する本邦研修への筆者らの参画を通じて得られたトルコの防災教育行政 や教員研修の制度について整理するとともに,関係者が防災教育の強化のために継続した交流に ついて跡付けた。
  • 秋山 典子, 折橋 祐希, 浦川 豪
    2023 年4 巻1 号 p. 77-88
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    学校防災体制を確立するためには、学校における災害発生時の対応等について教職員の役割を明 確にし、組織的に取り組んでいくことが求められている。学校現場は多様な職種の教職員が配置 されているが、学校防災マニュアルは管理職や教員の役割の明示に留まり、すべての教職員の役 割を示しているとは言えない。そこで、学校防災体制の総務の役割に着目し、学校唯一の行政職 員である学校事務職員の役割や業務を明らかにするための研究を行った。学校事務職員の役割や 業務を明らかにするため、ヒアリング調査や学校事務職員を対象にしたワークショップを実施 し、他の教職員と連携して関わる業務や単独で関わる業務について整理、検証をした。その結果 をまとめ、学校事務職員が担う業務を示したマニュアルを作成した。マニュアルに学校事務職員 の役割を明示することにより、学校防災における実行性の高い災害対応マニュアルを作成するこ とができた。
  • ――防災教育チャレンジプランと 1.17 防災未来賞ぼうさい甲子園の実践から――
    諏訪 清二, 舩木 伸江, 中野 元太
    2023 年4 巻1 号 p. 89-100
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    阪神・淡路大震災以降、防災教育は地域的にも内容的にも広がりを見せてきた。その背景には防災教育 支援 事業の存在がある。ただ、防災教育の広がりは限定的である。実践を妨げる様々な課題を整理すると、教職 員、教育法、教材、被災体験等に起因する8の課題が見えてきた。これらの課題を解決するとりくみの一つが防 災教育支援事業である。防災教育チャレンジプランと1.17防災未来賞ぼうさい甲子園がどのような支援を行っ てきたかをコンテンツと教育方法のDevelopment(開発)、Selection(選択)、Gradation(配列)の視点で考 察し、防災教育支援事業の可能性を論じる。
  • 鳥海 崇, 藤本 秀樹, 石手 靖
    2023 年4 巻1 号 p. 101-106
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    水災害が発生して避難する際に,浸水被害に遭遇する可能性が指摘されている.この場合は下半 身もしくは全身が水中に没するため命の危険に直結する一方,水没状態から陸に上がるために必 要な要素や技術についてはほとんど議論されてこなかった.そこで本研究では大学生を対象とし て,様々な条件下において水中から岸に上がる容易度(離水容易度)を測定した.離水容易度が有意に低くなる要因として,女性であること,ライフジャケット着用状態であること,壁が凸型 の形状であることが判明した.特に女性は泳力に関係なく,ほとんどの被験者が,足がつく状態 でも水面から高さ30cmの陸に上がることができず,男性に比べて死亡事故につながる危険性が高 いことがわかった.
  • 舩木 伸江, 伊藤 智, 前田 緑
    2023 年4 巻1 号 p. 107-114
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、家庭内常在食材と非常食備蓄の実態調査について分析、考察したものである。多く の家庭には、新たな購入がなくても、食材庫、冷凍冷蔵庫などに 3 日間程度過ごせるだけの常在 食材があるのではないかという問題意識から、一般家庭において常時、家庭内に「どんな食材が」 「どれくらいの量」保有されているのかの調査、ローリングストックの認知度、非常食備蓄の調 査を行った。その結果、7 割強が家族の 3 日分以上の常在食材があると回答し、また、家庭内の 常在食材内容は災害時に不足しやすい野菜などを含み 3 色食品群のすべてが栄養バランス良く そろっていることがわかった。これらの食材を、ローリングストックとして災害時に活かすため に、防災教育の観点から災害時の食料問題改善に貢献できる内容を提案している。
  • ‐ バヌアツ共和国を一例に ‐
    川崎 典子
    2023 年4 巻1 号 p. 115-120
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    Bündnis Entwicklung Hilftが2011年から毎年公表するWorld Risk Reportは、世界各国の災害リスクを 測定する一つの指標となっている。そのレポートは、海面上昇に加え、自然災害に対する各国の 曝露量と脆弱性を分析してきた。2022年に改訂された最新レポートでは、災害リスクの高い国の 順位が大きく変化した。その最たる例として、レポートの発刊以来長期にわたって世界一災害リ スクの高い国として認知されてきたバヌアツ共和国が最新レポートでは49位に順位を下げた。その背景には、レポートにおける災害リスクの算出方法の見直しが影響している。本稿は、バヌア ツを一例にして、レポートの改訂による災害リスクの変化について精査し、その変化による影響 に左右されずに防災教育支援という国際防災協力を続ける重要性を主張する。
  • 佐藤 菜穂子, 富永 嘉樹
    2023 年4 巻1 号 p. 121-131
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、阪神・淡路大震災の生存者の語りを聞くことが、子どもへの防災教育に対する教師の自信にどのような影響を及ぼすかを検討することである。防災教育に関するアンケートを、震災の遺族による講演を受講した17名の教師に対して、講演の前後で実施した。アンケートは、防災教育の自己効力感を測る10項目と、講演の印象についての記述式回答を含んでいた。結果として、10項目のうち6項目で有意な向上が見られた。この結果は、災害生存者の語りを聞くことが、防災教育を実践する自信を高める可能性があることを示唆している。また、教師の印象分析では、過去に災害経験がある人だけでなく、未経験の人も「語りを継ぐことの必要性」を強く意識するようになった。しかし、防災教育の自己効力感を測る10項目の信頼性・妥当性はまだ確認されておらず、本研究は予備的研究である。
  • - 学校や学年の枠を超えて生徒自身が主体的に推進する成田地域共創のグランドデザイン -
    横内 敬文
    2023 年4 巻1 号 p. 133-150
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2025/03/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、千葉県成田市のジュニアオーケストラでヴァイオリン奏者として活動する高 校生団長が、地域の防災教育に係る課題に向き合うために団内に地域探究チームを立ち上げ て小中高校生の仲間達と課題解決に取り組んだ成果である 「成田地域共創グランドデザイン」 を提案する。チーム内に 5 つの探究グループを組み、地域の専門家達と連携し、生徒自らが 主導して成田地域における地域防災や災害医療の課題解決に取り組んできた 4 年間の活動実 践を紹介したい。
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