抄録
本研究は、日本における包括的性教育の不足が、若年妊娠や性感染症の発生を通じて教育・就業機会の喪失や医療費の増加を引き起こし、経済的損失につながっている可能性を明らかにすることを目的とする。国内外の先行研究をもとに、性教育不足による経済的損失を整理し、日本の若年層における妊娠・性感染症の発生率、医療費、生涯賃金への影響などをもとに経済的損失を試算した。また、性教育を強化した場合に防ぐことができる経済的損失の推定も試みた。諸外国の実証研究に基づき、日本の若年妊娠率や性感染症率が改善した場合の医療・福祉コストの削減や、教育機会確保による生涯賃金の増加など含めて分析した。その結果、日本では若年妊娠による生涯年収の損失が年間37億円、予定外妊娠にかかる費用が約42億円に上ることが示唆された。これらの結果は、包括的性教育の普及が、個人の健康と権利を守るだけでなく、社会的・経済的な観点からも重要であることを示している。