2022 年 14 巻 p. 209-222
本研究では甲子園出場を目指す高校野球選手の3 学年にわたる心理的競技能力の縦断的変化を検討した.3 校(5 チーム)の硬式野球部員109 名を対象に,心理的競技能力検査(DIPCA: Diagnostic Inventory of Psychological Competitive Ability for Athletes)を各高校の春季大会終了後(5 ~ 6 月)に毎年実施した.109 名全員を1 群とした縦断的変化では,3 年生時に「自己実現意欲」下位尺度が低下したが,その他の因子と下位尺度においては顕著な変化は見られなかった.3 年生時にベンチ入りしたレギュラー群(64 名)とそうでないノンレギュラー群(45 名)に分けて比較した場合,レギュラー群の心理的競技能力はノンレギュラー群よりも高かった.レギュラー群は1 年生時から高いレベルの心理的競技能力を3 年生時まで維持したのに対し,ノンレギュラー群は「競技意欲」因子が3 年生時に低下した.レギュラー群の縦断的変化をチームごとで確認すると,ポジティブな変化を示すチームばかりでなくネガティブな変化を示すチームもあった.また,同じ学校でもその年のチームによって心理的競技能力の縦断的変化の様相は異なった.