2023 年 15 巻 p. 24-43
保健体育の教職課程ではウィズコロナ時代にあっても柔道を安全に教えられる指導力の基礎を育む必要がある.先行研究は,バディシステムの導入を通じて感染症対策と学修成果の保障を試みたが,模擬授業の実施などに起因して技能学修に課題が残されたことを報告している.本研究の筆頭著者がTAとして勤務する大学では,2022 年度には柔道の専門実技は模擬授業の実施を含む開講が予定されていた.本研究では,模擬授業の実施に際して「教科の指導法」の学修成果を活用し,感染症対策を受講生自身に徹底させるとともに技能の観察評価を行わせた.その結果,模擬授業の実施を通して,学生自身による感染症対策が徹底され,技能学修も充実した.また,授業最終回に模擬授業の振り返りとして教師役以外の受講生にも模擬授業の動画を用いて技能評価を行わせた結果,学習のつまずきを見出す評価には受講生間で高い一致率が認められた一方,「受と取を同時には見られない」などの典型的なつまずきも見出された.これらの結果から,専門実技において「教科の指導法」の学修成果を活用して技能評価を実施することには,運動の観察学習を含めた技能の学修を充実させられる可能性が示唆された.