2023 年 15 巻 p. 263-274
プロ野球投手は日本のトップレベルで活躍する選手であり,球速および制球のパフォーマンスアップへ向けて自身の運動感覚,意識に適していると判断したフォームやエクササイズを行っていると予想される.その運動感覚,意識を他者からではなく,自身の解剖学的および運動学的知識で説明されることは正確な理解につながる.そこで本研究では元プロ野球投手かつ理学療法士から投球のパフォーマンスアップにとって良好なフォームと良好なフォームを導くエクササイズについて,解剖学的知識から振り返り,その理由を含めて明らかにすることを目的とした.その結果,フォームとしては八つの重要な点を挙げ,なかでもワインドアップ期で軸脚の膝を伸ばし,胸郭を前後に傾斜させず,水平に保ち,立つことが重要であると述べた.また,そのためのエクササイズとして振り返ると内転筋エクササイズが重要なことに気づけた.軸脚の内転筋は並進移動時には重要だと言われているが,片脚立ちにおいても重要な可能性が示唆された.今回の聴き取り調査により,新たな発想が生まれたため,今後,同様の聴き取り調査は有用だと考えられる.