スポーツパフォーマンス研究
Online ISSN : 2187-1787
登山の事前トレーニングをポイント化し,登山の体力的な準備度を把握するための提案:
登山とランニングの併用案
吉塚 一典 濱田 臣二大山 泰史末永 貴久
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2023 年 15 巻 p. 401-411

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抄録

筆者らは「登りたい山に必要な体力水準」と「登山者自身の体力水準」のミスマッチを防ぐ方法として,登山前の事前トレーニングを登山とランニングを併用して行う場合についてポイント化し,登山の体力的な準備度を把握する方法(換算式)を考案した.さらに,考案した換算式の有用性や課題を検証するため,登山愛好者3 名を対象に剱岳への実証登山を試行した.剱岳の登頂に必要な体力は5900 ポイント(コース定数× 100)と換算した.被験者3 名には,2 ヶ月間の事前トレーニングで登山とランニングのポイントが各2950 で合算5900 獲得できることを目標に実施させた.事前トレーニングにおける目標ポイントの達成率は83.6 ~ 104% であった.その結果,事前トレーニング前後の体重あたりの膝関節伸展筋力は各被験者とも10 ~ 17%増加した.また,実証登山においても,転倒などの事故もなく,剱岳登頂と立山縦走を標準タイムの2/3 ~ 3/4 の時間で踏破でき,登山後の筋硬度や筋肉痛も軽微で,局所的,全身的疲労度も小さかった.これらのことから,今回提案した登山の体力的な準備度を把握する方法(換算式)は,安全な登山を支援する可能性がある.

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© 2023 日本スポーツパフォーマンス学会
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