抄録
人生100 年時代では,単に長寿を享受するだけでなく,より充実した人生を送るために,働き手には新たな能力の獲得と継続的なアップデートが求められる.そのため,近年,社会人基礎力の重要性が再び注目されており,大学教育において当該能力の獲得を促す授業を提供することは有意義である.そこで,本研究では,社会人基礎力の獲得を意図したPBL 型大学体育剣道授業(以下,「PBL 型剣道授業」と略す)の設計とそのプロセスの提示を目的とした.従来の剣道授業の改善点を,到達目標,実施内容,成績評価方法の3 観点から抽出し,PBL 型剣道授業の設計を試みた.その結果,いずれの観点においても,受講生の社会人基礎力の向上を促す上で不十分な点が確認されたため,それぞれ改善を図った.特に,PBL 型剣道授業の実施内容については,「グループ学修場面の増加」,「グルーピングの工夫」,「木刀による剣道基本技稽古法の導入」,「リフレクションの内容変更」,「授業担当教員の役割変更」に注目することでその改善を図った.当該プロセスの提示により,大学剣道授業の設計を行う際の一助となることはもとより,剣道以外の種目においてPBL 型授業を設計する際にも有益な知見となり得る.