スポーツパフォーマンス研究
Online ISSN : 2187-1787
17 巻
選択された号の論文の40件中1~40を表示しています
  • 髙橋 弥生, 前田 明
    2025 年17 巻 p. 466-477
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,世界のトップチームの連係の演技構成を明らかにすることを目的に行った.対象は,2022 年に行われた第39 回世界新体操選手権大会の団体種目別決勝Hoop5 の難度の得点が1 位から3 位の合計3 演技とした.演技構成の可視化は,筆者を含む日本国籍の国際審判員3 名で行った.世界のトップチームの連係は合計約11.0 点で構成され,単独のCR が一番多く,特にイスラエルは投げられた手具の中を通過する方法を多く用いることで単独のCR の構成点を高めており,イタリアはメインアクションの人数を増やすことで単独のCR の構成点を高めていることが明らかとなった.また,各種連係の最高構成点は,CC が0.5 点,単独のCR が0.72 点,単独の複数投げが0.48 点,単独の複数受けが0.5 点,複数投げと組合されたCR が0.97 点,複数受けと組み合わされたCR が0.9 点であった.各種連係の最短所要時間は,CC は1 秒,単独のCR は3 秒,単独の複数投げは3 秒,単独の複数受けは5 秒,複数投げと組み合わされたCR は3 秒,複数受けと組み合わされたCR は5 秒であった.
  • 是枝 亮, 廣田 修平, 花井 篤子, 菊地 はるひ
    2025 年17 巻 p. 448-465
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/17
    ジャーナル フリー
    エアロビック競技は国際体操連盟(FIG)の他の種目と比較し,歴史的に浅いこともあり,競技に関する研究報告は少ない.その影響もあり,エアロビック競技の採点規則に定められている難度エレメントの説明と技術要件の記載内容には不明確な部分がある.そのため,競技会における難度エレメントの実施方法,実施状況は多様となっており,難度エレメントの評価が的確に行われているとはいえない現状がある.そこで本研究は,発生運動学の体系論的構造分析に基づき,世界トップレベルの男子選手の多くが実施している「STRADDLE CUT 1/2 TWIST TO PUSH UP」の運動課題を縁取り分析し,本来実施されるべき本質的な運動課題を明確化することを目的とした.その結果,1)開脚した両脚が水平面運動を示すことを除き,その他の身体の運動は鉛直面の運動を行うこと,2)開脚した両脚を前方へと振り出す動作をするため,左右軸における後方回転で行うこと,3)左右軸による後方回転に加え,運動課題として長体軸に1/2 ひねりを達成する必要があること,という三つの運動課題が明らかとなった.
  • 熊谷 史佳, 菅生 貴之, 村山 孝之
    2025 年17 巻 p. 437-447
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,競争状況とフロー感覚に着目し,競争中に優勢または劣勢といった競争状況を認知した際,どちらの状況がその後の課題におけるフロー感覚とそれに伴うパフォーマンスを促進させるのかを検討することを目的とした.実験参加者は,2 人1 組でのシーケンスタッピング課題による競争を実施した.TASK1 で30 秒間の課題を行った後,両者に結果を開示し,自身が優勢であるか劣勢であるかを認知させた.TASK2 では,TASK1 の結果を持ち越した上で再度30 秒間の課題を行なった.パフォーマンスの指標にはタッピングの回数とミスの回数を,フロー感覚の評価にはSport Flow Scale を用いてTASK1,TASK2 の比較を行った.その結果,パフォーマンス指標では,競争状況を優勢と認知しても劣勢と認知してもTASK1 からTASK2 にかけてタッピング回数が有意に増加した.しかし,フロー感覚においては,状況を劣勢と認知した実験参加者のみ,TASK1 からTASK2 にかけてフロー得点が有意に増加した.このことから,競争場面において,対戦相手と同等のパフォーマンスを発揮したとしても,その状況によって得られるフロー感覚は異なり,状況を劣勢と認知した方がより課題に対するフロー感覚を獲得することが示唆された.
  • 失敗・成功時における大学選手間の認知様相の違いを手がかりに
    西園 聡史, 金高 宏文, 田村 達也, 山平 芳美, 髙橋 仁大
    2025 年17 巻 p. 421-436
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー
    本研究は大学サッカーを対象に,グループ戦術として複数人がボールを奪取する際,選手の認知の様相を明らかにすることを目的とした.研究方法は,ボールを奪取することに失敗と成功した場面に関わる6 人にインタビューを実施した.瀧井(1995)及び中川(1984)に基づきマトリックス表を作成し,6 人の発言を分類した.本研究の成果は以下3 点である.1)ボールを奪取することに失敗した場面は,「場面3:誘導1」「ゲーム状況の認知」で4 人の選手から誘導の発言が確認できなかった.「場面4:誘導2」「プレーに関する決定」で1 人がドッペルンの認知を有していなかった.2)ボールを奪取することに成功した場面は,「場面1:規制」「場面3:誘導1」で右サイドに追い込み誘い込みボール奪取しようとする認知が確認された.「場面1:規制」から「場面5:ボール奪取状況」は中盤型プレッシングの方法と同じ認知の様相を6 選手全員が有していた.3)「場面3:誘導1」のボールを奪取することに失敗した場面と成功した場面から,グループ戦術として2 選手以上が誘導の認知を有していた場合,ドッペルンの認知を有していた場合,ボールを奪取できる可能性がある.
  • 新谷 昴, 杉田 正明
    2025 年17 巻 p. 411-420
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/02
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本国内で流通している2 機種の自転車エルゴメーター(風神雷神とPOWER-MAX V3)の立ち上がりから規定回転数に到達するまでの負荷精度を検証することを目的とした.立ち上がりから規定回転数に到達するまでのパワー値,トルク,回転数の推移および負荷精度について,表示された値と実測値を比較した.結果として,規定回転数に到達するまでの時間やパワー値,精度誤差において両機種間で異なる挙動が確認された.トレーニング実施時にはこれらの差異を考慮する必要があることが示唆された.また,風神雷神は比較的一定のパワー値を保つ傾向にあることが明らかになった.本研究は,異なる機種の自転車エルゴメーターを使用する際,同じ負荷設定でも機種によってトレーニング効果に差が出る可能性があることを示唆し,実際のトレーニング実施において機種選択の重要性を示す.
  • :事例研究
    佐藤 文平, 田邊 大吾, 佐藤 周平, 星野 豪史, 安永 好宏
    2025 年17 巻 p. 400-410
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ロボットスーツHAL(腰タイプ)を用いたサイバニック随意制御(CVC)スクワットエクササイズが,ゴルフのドライバーショットに及ぼす影響を明らかにすることであった.対象は高競技レベル(HDCP 0)の健康なゴルファー2 名(19 歳,52 歳)とし,プレテスト,通常スクワット後,HAL エクササイズ後の3 条件において,飛距離,クラブスピード,柔軟性(SRT),動的バランス(FRT),主観的評価(力の伝わり方・タイミング)を測定した.ドライバーショットはトラックマンを用いて評価し,半構造化インタビューも実施した.その結果,若年者はHAL エクササイズ後に飛距離が15 ヤード,クラブスピードが0.9 m/s 向上し,全ての項目で改善がみられた.一方,中高年者では飛距離2 ヤード,クラブスピード0.6 m/s の向上にとどまり,FRT および主観的評価の変化は限定的であった.これらの結果は,HAL の即時的な運動学習支援効果が若年層においてより高い可能性を示唆しており,年齢や運動特性に応じたエクササイズ内容の工夫と継続的な介入の必要性が示唆された.
  • 池田 希
    2025 年17 巻 p. 381-388
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/24
    ジャーナル フリー
    電子付録
    接骨院の国際活動としてカンボジア王国にある日本語学校併設柔道場にて,現地視察と柔道クリニック講師を務める機会を得たため,今後の柔道国際活動の一助に向けて報告する.日本語学校では教室内での学習だけではなく,柔道場を活用した発表会などのイベントを行うことで,柔道を通して日本文化に触れるという活動もされているとのことであった.柔道場では日本で柔道指導法を学んだ指導員が,日本とカンボジア王国それぞれの文化を尊重した指導がなされていた.柔道クリニックでは外傷予防に向けて受身の細かなポイントを重視した指導を行い,競技レベルに合わせた大内刈の技術指導も行った.今後も,柔道を通して日本の伝統文化がより広く発信されることを期待し報告を終える.
  • 西野 太陽, 玉田 理沙子, 辻 孟彦, 伊藤 雅充
    2025 年17 巻 p. 372-380
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,新米野球投手コーチである筆者がアクションリサーチ(AR)を通じて自身のコーチング行動を省察・改善する過程と,その変化が選手の学びや行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする.A 高校硬式野球部の投手5 名を対象にAR を実施し,筆者のコーチング行動および発話の変容をThe Arizona State University Observation Instrument(ASUOI)とテキストマイニングにより分析した.その結果,筆者のコーチングにおいて「動作中の指導」が減少し,「発問」や「具体的表現」の使用が増加したことが確認された.また,選手の発話には,動作に対する自己評価の言語化が増加する変化も確認された.さらに,こうした実践の変容が選手の心理的能力に与える影響を検討した結果,J-PATEAの「自己分析力」や「客観性」において有意な向上が認められた.これらの結果より,AR は新米コーチ自身の学びを支援するとともに,選手の内省的な学びを促進する有効な枠組みである可能性が示された.
  • スピードスケート競技の事例
    小野寺 峻一, 會田 宏, 河合 季信
    2025 年17 巻 p. 357-371
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー
    わが国のスピードスケート競技は,シニア世代の国際競技力はトップレベルであるが,競技人口減少に伴う近い将来の競技力停滞抑止が課題である.本研究は,トップアスリートの指導者へのインタビューから,アスリート育成の課題を考察した.その結果,育成資源の偏り,育成戦略の欠如,共有・協働の機会の不足,調整組織の不在の4点が課題であり,統括的に育成活動のマネジメントを担う組織が不在であることに起因すると考えられる.
  • RWC2023 を事例とした得失点構造のモデル化
    戸田 尊
    2025 年17 巻 p. 349-356
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,ラグビーユニオンにおいて得点と失点に寄与する要因の構造的な違いを明らかにすることを目的とした.RWC2023 のゲームスタッツを用いて,チームの攻撃及び守備の成果に影響を与える主要なパフォーマンス指標(KPI)を明らかにするため,重回帰分析を実施した.その結果,得点モデルでは,「前進距離(Metres Carried)」,「ラインアウト成功率(Lineout Success)が得点に正の影響を与え,「反則数(Penalties Conceded)」と「キャリー数(Carries)」は負の影響を示した.一方,失点モデルでは,「タックルミス(Missed Tackles)」が失点を増加させ,「プレー中のキック数(Kicks in Play)」と「ラインアウト成功率(Lineout Success)」は失点を抑える方向に寄与した.特にラインアウト成功率は両モデルで有意な変数であり,セットプレーの重要性は,得点機会を増やすだけでなく,失点抑制にも影響することが示唆された.これらの結果は,得点と失点が部分的に異なる要因によって規定されており,戦術設計やコーチングにおいて攻撃と守備を分けて最適化する必要性がそれぞれの専門性を高める上で重要であることを示唆している.
  • グライド動作後半の右足接地からリリースまでの体重移動を対象として
    田川 浩子, 瓜田 吉久, 鳴瀧 美咲, 金高 宏文
    2025 年17 巻 p. 340-348
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,大学女子競技者が砲丸投における投げ方向への「体重移動」の早期完了が改善できた試技を手がかりに,2 台の地面反力計を用いて,グライド動作後半の右足接地からリリースまでの「体重移動」を客観的に可視化できるかについて検討することを目的とした.そのために,投げ動作内における両足支持期に着目して荷重比を算出し,比較した.その結果,技能改善前は左足接地後,0.08 秒で左足に90%荷重しているのに対し,技能改善後では,0.14 秒で左足に90%荷重していた.グライド動作後半の右足接地からリリースまでの動作時間にはほとんど差が見られなかったものの,技能改善後の方が左足接地後,左足への「体重移動」が緩やかに行われ,投てき距離も0.36m 長かった.本研究の地面反力データを用いた荷重比の算出は,「体重移動」の変化を客観的に可視化する上で有益であり,このような地面反力データを活用することは,技能改善を目的としたひとつの活用方法として提示できるものであると考えられた.
  • ボールポゼッションの展開エリアとパスのテンポに着目して
    坂尾 美穂, 髙橋 仁大
    2025 年17 巻 p. 327-339
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,大学女子サッカーチームを対象に,「攻撃力向上」を図る項目として,ボールポゼッション時に攻撃が展開されるエリアとパスのテンポに着目し,試合における変化の有無を調査することを目的とした.また調査対象としたチームの背景を踏まえた考察を行い,コーチング実践現場における攻撃力向上について関わる要因を検討した.攻撃が展開されるエリアはチーム戦術の遂行力として,パスのテンポは個人のテクニック,判断力を図る項目として設定した.対象は,同一チームによる4 試合,合計792 回のボールポゼッションであった.結果は,攻撃が展開されるエリアとパスのテンポの両項目において違いが見られた試合があったため,変化する可能性が示唆された.また,違いが見られた背景には,日常的に所属リーグにおいて採用した戦術の影響がある可能性が推察された.本研究の結果から,チーム戦術の遂行力と個人のテクニックや判断力の両面にアプローチすることが,コーチング実践現場では有用であるという新たな仮説が導き出された.
  • 国内大学男子トップレベルを対象として
    橋本 岳人, 湯浅 暁子, 岩澤 恭冴, 秋山 央
    2025 年17 巻 p. 315-326
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,大学男子トップレベルのバレーボールにおける勝敗における技術項目を検討し、5 セット目に見られる特有の傾向を明らかにすることを目的とした.分析の結果,対象とした5 セット目における相手チームとの得失点差と,レセプションアタック,ディグアタック,ブロックとの間に正の相関関係が認められた.レセプションアタックについては,決定率(r = .51)および効果率(r = .55)との間,ディグアタックでは決定率(r = .42)および効果率(r = .47)との間に有意な中程度の正の相関が認められた.ブロックについては,効果率との間に有意な中程度の正の相関(r = .44),ミス率との間に有意な中程度の負の相関(r = -.44) が認められた.大学男子トップレベルの5 セット目では,レセプションアタック決定率および効果率,ディグアタック決定率および効果率,ブロック効果率およびミス率が得失点差に影響を及ぼしていると言えよう.アタックが勝敗に最も大きな影響を及ぼしていることについて,5 セット目を区別しない従来のゲーム分析的研究と同様の傾向が認められ,数々の先行研究を支持する結果であった.しかし,本研究において,ブロック効果率およびミス率と得失点差との関連が認められたことから,5 セット目と他のセットは異なるゲーム構造を持つ可能性が示唆された.
  • 山口 寛基, 森 隆彰, 花野 宏美, 大石 寛, 池上 健太郎, 山本 結子, 石井 好二郎
    2025 年17 巻 p. 306-314
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー
    暑熱環境の計測をする上で使用されている指標としてWBGT があるが,多くのスポーツ現場で用いられている湿度センサーを使用した WBGT 計(センサー式)は,自然湿球を使用した WBGT 計( 自然温度計式) との間で誤差が生じることが指摘されている.しかしながら,異なる測定方法のWBGT 計を使用した場合,スポーツ時の暑熱環境評価にどのような影響を及ぼすかについてサーフェスごとに検証はされていない.我々は様々なサーフェスで試合が行われているテニスにおいて,自然温度計式およびセンサー式におけるテニスコートのWBGT評価の違いを検証した.夏季の3 ヶ月にわたる測定の結果,いずれのサーフェスでも両測定方法では妥当性を有する一方,センサー式ではWBGT の上昇に伴い実際の暑熱環境を過小評価してしまうことが明らかとなった.運動は原則中止レベル( 31 ℃≦ WBGT) の環境下において,ハードコートでは過半数のデータで運動指針レベルの誤分類が生じていた.厳しい暑熱環境下で測定を行う際は,センサー式の場合,積極的な暑熱対策を実施することや湿球温度の補正も進めていく必要が示された.
  • 林 和希, 加藤 健志, 有賀 誠司
    2025 年17 巻 p. 294-305
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大学競泳選手の跳躍能力および下肢筋力を測定し,競泳選手の下肢の特性を検討するとともに,それらの能力とスタートパフォーマンスとの関係を明らかにすることであった.男子水泳選手18 名を対象に,下肢ではスクワットジャンプ(SJ),カウンタームーブメントジャンプ(CMJ),リバウンドジャンプ,スクワット(SQ1RM)を測定した.スタートではキックスタートとシングルレッグスタートの10 m 到達タイムを測定した.競技力はWorld Aquatics points(WA points)を指標とした.各測定値間の相関分析に加え,WA points による中央値で分類した2 群間の比較,およびSprint 群とMid-Long 群による専門距離の比較分析を行った.その結果Sprint 群はMid-Long 群よりSQ1RM が有意に高く,長水路WA points とSQ1RM に負の相関を認めた.キックスタートはSQ1RM,CMJ,SJ に,シングルレッグスタートはSQ1RM のみ有意な負の相関を認めた.これらにより競技力や専門距離に応じた下肢筋力の特性が存在し,キックスタートの前脚に下肢筋力が関与すると考えられる.
  • 髙尾 憲司, 坂尻 有花, 本庄 悠紀奈, 濱口 幹太, 伊坂 忠夫
    2025 年17 巻 p. 289-399
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,一般市民ランナーを対象にマラソンレースの走速度とトレーニング走速度との関係を明らかにし,トレーニング走速度の設定方法を検討することを目的とした.フルマラソンを完走した一般市民ランナー100 名(男性50 名,女性50 名)を対象に調査を行った.その結果,男性ではトレーニング走速度とBMI,月間走行距離,マラソン走速度との間に有意な相関関係が認められた.女性では,BMI,月間走行距離,ランニング経験年数,マラソン走速度と有意な相関関係を示した.これらの指標を用いて,男女別にトレーニング走速度を予測する回帰モデルを作成した結果,検証群においても予測されたトレーニング走速度は実測値と高い相関関係を示した.以上の結果から,一般市民ランナーが目標とするマラソン走速度に対して,適正なトレーニング走速度の設定が可能となり,一般市民ランナーのトレーニングに有用である可能性が示唆された.
  • 公式戦への出場経験と援助要請への抵抗感の観点から
    並木 伸賢, 堀野 博幸
    2025 年17 巻 p. 284-293
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/17
    ジャーナル フリー
    大学生アスリートにとって公式戦への出場は非常に重要な要因であるが,メンタルヘルスとの関連を検討した研究は少ない.本研究の目的は,大学ラグビー選手における公式戦への出場経験と援助要請に対する抵抗感がメンタルヘルスとどのような関連があるのかを検討することであった.関東圏の4年制大学において体育会運動部のラグビー部に所属している男子選手を対象に質問紙調査を行い184 名(平均年齢20.32 ± 1.36 歳)が分析対象者となった.調査対象者のうち関東大学対抗戦に出場経験ありが45 名,関東大学ジュニア選手権に出場経験ありが40 名,公式戦への出場経験なしが99 名であった.分析の結果,①公式戦に出場経験のない人が,ある人に比べてK6 およびBDSA 得点は有意に高いこと,②対抗戦出場経験ありの選手を除き,援助要請への抵抗感の高さとK6 およびBDSA の間に中程度の正の相関がみられた.公式戦への出場経験がメンタルヘルスに及ぼす影響が示唆されたこと,特に各大学のトップチームに所属していない選手が専門家に助けを求めること,助けを求めやすい環境整備や情報提供が必要であることが示唆された.
  • 鍋山 隆弘, 奈良 隆章, 坂本 昭裕
    2025 年17 巻 p. 271-283
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/11
    ジャーナル フリー
    人生100 年時代では,単に長寿を享受するだけでなく,より充実した人生を送るために,働き手には新たな能力の獲得と継続的なアップデートが求められる.そのため,近年,社会人基礎力の重要性が再び注目されており,大学教育において当該能力の獲得を促す授業を提供することは有意義である.そこで,本研究では,社会人基礎力の獲得を意図したPBL 型大学体育剣道授業(以下,「PBL 型剣道授業」と略す)の設計とそのプロセスの提示を目的とした.従来の剣道授業の改善点を,到達目標,実施内容,成績評価方法の3 観点から抽出し,PBL 型剣道授業の設計を試みた.その結果,いずれの観点においても,受講生の社会人基礎力の向上を促す上で不十分な点が確認されたため,それぞれ改善を図った.特に,PBL 型剣道授業の実施内容については,「グループ学修場面の増加」,「グルーピングの工夫」,「木刀による剣道基本技稽古法の導入」,「リフレクションの内容変更」,「授業担当教員の役割変更」に注目することでその改善を図った.当該プロセスの提示により,大学剣道授業の設計を行う際の一助となることはもとより,剣道以外の種目においてPBL 型授業を設計する際にも有益な知見となり得る.
  • 指導書のトス技術に着目して
    松井 優一, 湯浅 暁子, 青木 聡二郎, 橋本 岳人, 佐藤 嘉生, 秋山 央
    2025 年17 巻 p. 261-270
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,バレーボール競技において重要なポジションであるセッターのトス技術について指導書の内容を検討し,初級者が上達するために重要となる指導ポイントを提示することであった.トス技術に関するセッターの指導ポイントを指導書から抽出し,合議を行うことによって初級者が上達するために重要となるセッターのトス技術に関する指導ポイントを提示した.本研究の結果,トス動作は,5 局面が関連し合うだけでなく,多くの身体部位が連動して行われるプレーであり,段階を踏みながら一つ一つを丁寧に指導していく必要があることが示された.また,細かくフィードバックすることや初級者が動作をイメージしやすい表現を用いることも有効であると考えられる.本研究で得られた結果が初級者に対するセッター指導の一助となることが期待される.
  • 全国大会出場レベルのチームを対象とした事例的研究
    伊藤 大永, 内藤 雄斗
    2025 年17 巻 p. 252-260
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学生女子サッカー選手において、直線走,跳躍能力,方向転換能力の観点から、アジリティを決定する要素について示唆を得ることであった.本研究には,27 名の中学生女子サッカー選手が参加し,リアクティブシャトルテストのタイム,プロアジリティテストのタイム,直線走のタイム,カウンタームーブメントジャンプの跳躍高,リバウンドジャンプのreactive strength index(RSI),立ち幅跳びを測定した.リアクティブシャトルテストでは,スタート時の反応時間も測定し,プロアジリティテストのタイムと直線走のタイムからchange of direction deficit を算出した.リアクティブシャトルテストのタイムを目的変数とし,リアクティブシャトルテストのスタート時の反応時間,10 ヤード走タイム,COD deficit,カウンタームーブメントジャンプの跳躍高,立ち幅跳びの跳躍距離,リバウンドジャンプのRSI を独立変数とする重回帰分析を行った.重回帰分析の結果,リアクティブシャトルテストの説明変数として,10 ヤード走タイム,反応時間,COD deficit が選択され,調整済みR² は0.90であった.これらの結果は,女子中学生サッカー選手のアジリティが直線走と反応時間,方向転換能力によって大部分を説明できることを示している.
  • 杉山 智哉, 齋藤 卓
    2025 年17 巻 p. 240-251
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/15
    ジャーナル フリー
    近年,体操競技では難度点が加算されるルールに採点規則が改訂された影響により,選手は高難度技を最低10 技入れないと競技会で優位に立つことができない状況になった.それゆえ選手は高難度技の習得が求められており,多くの時間をかけて技の技術を身につけるトレーニングを行っている.そこで,本研究では鉄棒における〈バーを越えながら後方伸身宙返り1 回ひねり懸垂(以下,〈カッシーナ〉と表記する)〉を取り上げ,コツの解明を試みた.〈カッシーナ〉は現行ルールにおいてG 難度に位置づけられている高難度技であり,なおかつ,この技に1 回ひねりを加えると鉄棒における最高難度のI 難度である〈バーを越えながら後方伸身宙返り2 回ひねり懸垂(以下,〈ミヤチ〉と表記する)〉となる.本研究は発生運動学における地平論的構造分析の方法を用いて〈カッシーナ〉の技術情報を明らかにすることで〈ミヤチ〉の技術習得に役立つ情報を提供することを目的とした研究である.本研究において明らかになったことは〈カッシーナ〉や〈ミヤチ〉を実施する上では〈後方車輪〉においてあふり反動技術を用いることが重要であり,習得のための基礎的な技術情報であることが示唆された.
  • 7 年間の登山事例の分析から
    吉塚 一典
    2025 年17 巻 p. 231-239
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,筆者の過去7 年分の登山内容および,ランニングを加味した登山のための体力的な準備状況の変化を報告することで,3000 m 級の高山登山に向けた事前トレーニングのヒントを得ることを目的とした.対象者は筆者1名とし,GPS 付の腕時計で計測していた距離や速度,登下降距離により,ポイントを算出して登山の準備度とした.その結果,日常的な登山状況は,頻度が1.4 回/月,登下降距離が850 m /月であり,ランニングでのポイントを加えても,高山に行くには不十分であると考えられた.一方,高山登山を意識した準備期は,登下降距離が1294 m /月と不足していたが,ランニングでのポイントを加えると2 ヶ月で6129 ポイントと設定ポイントに達していた.そして,その後に実施した3000 m 級の高山の縦走登山においても,疲労も軽微でトラブルなく踏破することができていた.これらのことから筆者の場合,ポイント獲得を意識した準備トレーニング活動を約2 ヶ月間実施すれば,高山に行くための体力的な準備ができると考えられた.また,登山とランニングを併用したポイント制案を活用することで,地理的な問題や時間確保が難しいなどの理由で十分な事前登山ができない人にとっても,自分の体力的準備度を把握しやすくなると考えられた.
  • 張 麗娟, 杉田 正明
    2025 年17 巻 p. 220-230
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,第18 回全日本テコンドー選手権東日本地区大会および第18 回全日本学生選手権大会を対象に,技術と戦術の分析を通じて日本の選手の特徴を明らかにすることを目的とした.結果として,選手は前回し蹴りや横蹴りなど実行が容易で成功率の高い技を多用する傾向があり,高難度技術は使用頻度が低いものの得点ポテンシャルが高いことが示された.迎撃戦術は高い得点効率を示し,反撃戦術も特定の場面で有効であった.勝者は技術の連続性に優れる一方で,打撃力不足が課題として浮上した.また,中段技術の使用頻度は高いが成功率は低く,上段技術は特に踵落とし技術で高い得点効果を発揮することが確認された.本研究は,高難度技術や迎撃戦術の強化と,技術の連続性および打撃力の向上が今後のトレーニングで重要であることを提案する.
  • 馬目 知人, 菅井 夏輝, 宮崎 利勝
    2025 年17 巻 p. 211-219
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,陸上競技投てき種目を専門とする大学生競技者を対象にRIR(Repetitions in Reserve)を用いたスクワットトレーニングの継続が競技パフォーマンスに与える影響を検証した.スクワットトレーニングは,RIR を用いて挙上重量を設定し,1 年間継続された.Pre とPost を比較した結果,スクワット挙上重量と投てき距離が有意に増加した.また,体重は有意に増加したが,垂直跳び跳躍高は維持された.RIR を用いることにより,オーバートレーニングや怪我のリスクが低く抑えられた中で,年間を通してスクワットトレーニングを継続することが可能となる.これらのことから,RIR を用いることは,スクワット挙上重量の向上に有効な手段であると考えられる.また,スクワット挙上重量の向上が陸上競技投てき選手の競技パフォーマンスを高めるための一要因であることが示された.
  • ラマダン期間のパキスタンでのコーチング報告
    池田 希
    2025 年17 巻 p. 204-210
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル フリー
    電子付録
    ラマダン期間中のパキスタン柔道家に対して,柔道コーチングを行う機会を得たため,今後の柔道コーチングの一助に向けて報告する.ラマダンによる集中力低下に対しては,指導者が気を配り,通常期の稽古に対して,稽古内容の改善などが必要であると考えられた.柔道発展途上であるパキスタンであり,現場での指導者不足の影響で,柔道の基本指導が十分になされてない状況がみうけられたため,柔道の背景から礼法や受身等の指導を行った.さらに,畳などの柔道用品不足による外傷発生リスクの高い環境で稽古に取り組んでおり,外傷予防に向けた安全指導にも取り組んだ.技術指導では組手や技に関して積極的に質問され,日本の技術を積極的に取り込もうとする姿勢が伺えた.環境が改善され,技術に貪欲なパキスタン柔道の振興を期待し,報告を終える.
  • 初心者および陸上選手の支持脚の股関節角度,膝関節角度に着目して
    西村 三郎, 木野村 嘉則
    2025 年17 巻 p. 186-203
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,短距離走の疾走動作を分析した先行研究をレビューすることを通して,初心者から競技者まで幅広く支持脚の疾走動作の特徴を明らかにすることを目的とした.国内外の三つの検索エンジンを用いて,英語および日本語で執筆された初心者および陸上選手を対象に短距離走の中間疾走局面の支持脚の疾走動作を分析した先行研究を収集し,股関節および膝関節角度の平均値や群間比較の結果を集約した.主な結果は以下の通りである.接地時の股関節角度は,陸上選手は初心者よりも大きい傾向が見られた.支持脚の最小膝関節角度は,初心者では疾走速度の高い者ほど大きく,疾走速度の高い初心者は,疾走速度の低い陸上選手と同程度の値を示した.離地時の膝関節角度は,初心者では疾走速度の高い者ほど大きく,陸上選手では疾走速度の高い者ほど小さかった.支持脚の膝関節の屈曲角変位は,疾走速度の高い初心者は世界一流短距離選手と同程度の値を示した.
  • 2024 年全日本柔道選抜体重別選手権大会を対象として
    川戸 湧也, 山本 幸紀, 松井 高光, 藤本 太陽
    2025 年17 巻 p. 176-185
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/02
    ジャーナル フリー
    本研究では,柔道競技におけるスポーツパフォーマンス向上に貢献するために,試合において発現する「かけひき行動」の頻度と傾向について探索的に検討した.研究対象は,2024 年度に実施された全日本柔道選抜体重別柔道選手権大会の全ての試合とした.分析にあたり,先行研究を踏まえて,共同研究者との協議を通して2 局面における9 つの行動を分析枠組みとして設定した.分析の結果,相手と組んでいない時は,「組み付く」が最も多く278 回(31.4%)であった.組み合った後では,「振り解く・組手を切る」394 回(41.6%)で最も多かった.男女別で整理したところ,「弾く」,「ずらす・釣手を押さえる」,「振り解く・組手を切る」が男子において有意に多く,「組み付く」と「かわす」,「突っ張る・押さえる」が女子において有意に多かった.また階級間で比較したところ,軽量級ほど相手と距離をとるための行動が多く,重量級ほど組んだ後で自分の体勢を優位にしようとする行動が多かった.本研究を通して,試合における「かけひき行動」特徴を明らかにできた.加えて,男女や階級間のパフォーマンス構造の同異を明確にすることができた.
  • 梅田 怜那, 栫 ちか子
    2025 年17 巻 p. 147-175
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/02
    ジャーナル フリー
    電子付録
    現在,鹿児島県内には,創作ダンスに取り組んでいる高等学校ダンス部が複数存在しており,作品にクラシックバレエやコンテンポラリーダンス,モダンダンスの要素を取り入れて創作をおこなっている学校が多く見受けられる.しかし,県全体として,ダンスの経験年数が少ない生徒が多いという要因から,クラシックバレエやコンテンポラリーダンス,モダンダンスの身体技能を含んだ,より高度で発展的な動きを取り入れた部活動レベルのダンスを踊る上で必要な基礎技術を習得している生徒が少ない.そこで,鹿児島県内の高校ダンス部を対象としたこうした創作ダンスを踊る上で必要な基礎技術の向上を目指した練習法の開発が必要であると考え,練習用コンビネーションの作成を目的とした.今回は5 系統計6 種類のコンビネーションを作成し,1 校の高等学校ダンス部で実践を行った.その後2 週間の継続練習を行った結果,各コンビネーションにおいて部分的に動きの改善が見られたが,設定したねらいを完全に達成するには課題が多く残るかたちとなった.そこで,対象のダンス部に実施したアンケートと継続練習の成果から,より効率的かつ効果的なコンビネーションにするために内容を再検討し,5 系統計5 種類のコンビネーションへ改良を行った.今後は本研究で作成したコンビネーションの成果と課題について,客観的な指標を用い,さらに長期間の経過観察を実施してより科学的に検証し,より良い練習法について検討していきたい.
  • 指導者の実態と資格に対する意識
    安達 詩穂, 渡辺 碧, 八木 ありさ
    2025 年17 巻 p. 131-146
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/25
    ジャーナル フリー
    モダンダンスやコンテンポラリーダンスのダンススタジオは,情報が広く開示されることや,実態調査が行われたことがない.そこで,学習者が身近に使用できる開示度の高いツールであるインターネット検索サイトを用いて対象者を抽出し,日本のモダンダンスおよびコンテンポラリーダンスのダンススタジオと指導者の実態と資格に対する意識を明らかにすることを本研究の目的とした.郵送およびインターネット調査を用いたところ,87/403 名(回収率21.6%)のデータが得られた.結果,1980 ~ 1990 年代に設立されたダンススタジオが22 ~ 25% で,1 教室あたり平均59.63 名,2 ~ 86 歳の生徒がいることがわかった.指導者の平均年齢は52.45 ± 15.88 歳で,指導しているクラス名,経験のあるダンスジャンル,保有資格が多様であることがわかった.指導者のキャリアとしては,カンパニー所属経験有り65.33% 等の結果が明らかとなったが,これらの情報でダンス指導スキルを評価できるかどうかという点については,指導者自身確信を持てないということがわかった.資格保有義務という点でも,懐疑的であることがわかった.
  • 田方 慎哉, 青柳 領, 小牟礼 育夫, 金田 詳徳
    2025 年17 巻 p. 119-130
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,W リーグにおける1 シーズン中での各チームが持つ「固有な戦術スタイル」と「対戦相手の特徴に応じて戦術を変える可変性」について,スタッツを用いて統計学的に検討した.対象は,2022-23 シーズンにW リーグに在籍した14 チームである.用いたゲームのスタッツは,4 Factor を参照した全14 項目とした.チームの特徴を視覚的に把握するために各チームの平均値行列にコレスポンデンス分析を行い,各チームの布置の特徴を「独自性」「顕著さ」から操作的に定義し,各チームの試合ごとの変化を2 次元布置の位置関係や軸の名称から検討した.その結果,オフェンスの特徴は,「3P」「2P」「消極的なオフェンス」「積極的なオフェンス」であり,ディフェンスの特徴は,「3P」「2P」「ディフェンスの成功」「フリースローの獲得」であった.事前に対戦相手を分析して,十分な準備のもとで戦うリーグ戦においては,対戦相手に応じた戦い方の優位性が示された
  • 世界トップレベルと国内大学レベルの比較
    廣瀬 恒平, 千葉 剛, 髙橋 仁大
    2025 年17 巻 p. 107-118
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,世界トップレベルと国内大学レベルの比較を通して,タックル局面におけるパフォーマンスとプレーを成功させる要因との関連性を検討し,非トップレベルにも有用な知見を得ることを目的とした.分析の結果,以下のような知見が得られた.1)上体へのタックルの有効性は高い.2)非トップレベルにとっては,上体へのタックル比率を向上させることも重要であるが,上体および下体へのタックル両方の精度向上が課題である.3)タックルアシストの有効性は高い.4)国内大学レベルにおけるタックルアシスト発生比率は世界トップレベルよりも高い.5)非トップレベルにとっては,タックルアシストの精度向上が課題である.6)タックルアシストを可能な限り発生させながら,下体へのタックルを志向していくことが重要である.7)前に出る防御の有効性は高い.8)非トップレベルにとっては,防御ラインを整備するための時間的余裕を作り出すことが課題である.これにより,防御側の視点に立脚したゲーム構造としての「前進」,「支援」,「圧力」に含まれる各要素の改善が,「地域阻止」に貢献することが示された.
  • インシステムとアウトオブシステムに着目して
    田中 響, 髙橋 仁大, 坂中 美郷, 沼田 薫樹, 大工園 彩夏, 濱田 幸二
    2025 年17 巻 p. 99-106
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,女子V リーグを対象に攻撃状況をインシステム(以下,IS)とアウトオブシステム(以下,OoS)に分類し,それぞれの攻撃状況におけるレフトからのレセプションアタックの成否に関わる要因を明らかにすることを目的とした.その結果,どちらの攻撃状況においても攻撃強度が最も成否に寄与することが明らかになり,さらにIS においてはブロック枚数,OoS においてはトス種類,攻撃位置がレセプションアタックの成否に寄与することが明らかになった.カテゴリースコアから詳細にカテゴリー別の貢献度を見ると,どちらの攻撃状況においても,攻撃強度の軟攻が負の値を示していたことから(IS:-1.951, OoS:-1.192),いかなる攻撃状況においても強打することを目指しながら,強打が難しい状況下においても,相手チームが攻撃しにくく,自チームが次のラリーを優位に展開できるような返球を行うことが必要になると考えられる.さらにIS においてはブロック枚数を少なくすることが決定に貢献し,OoS においてはオーバーハンドを用いてトスを上げ,スロット1 およびスロット2 から攻撃することが決定に貢献することが明らかとなった.
  • 菊政 俊平, 國部 雅大
    2025 年17 巻 p. 88-98
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,野球の外野手が二者間に飛来する打球に対して,捕球する選手に関する判断を行う場面における選手間の位置関係や声かけについて検討することを目的とした.大学硬式野球部に所属する8 名(センター4 名,ライト4 名)を対象とし,実際のフィールドにおいて,センターとライトの間に打たれたゴロやフライをどちらの選手が捕球するかを判断し,実際に捕球を行う課題を実施した.その結果,両選手のインパクト時の位置から捕球位置までの距離の差が大きい(本研究では2m 以上)場合には,選手の位置関係や打球の情報に基づいて捕球する選手に関する判断を行っており,主に捕球位置までの距離が短い方の選手が捕球を行っていることが明らかになった.また,声かけについては,一方の選手が声かけを行った後に,もう一方の選手も声かけを行うことによって選手間での意思疎通を図ることが多く,特に捕球者が意思表示の声かけを行った後に,非捕球者が指示の声かけを行うパターンが多くみられることが示された.さらに,選手の位置関係や打球に応じて声かけのタイミングを変動させており,打球が両者の中間付近に飛来した場合ほど遅いタイミングで声かけを行っていることが示唆された.
  • 上位の公認スポーツ指導者資格を保有する指導者のアイデア
    村上 俊祐, 岡村 修平, 髙橋 仁大
    2025 年17 巻 p. 74-87
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/21
    ジャーナル フリー
    トレーニングを効果的に推進するためには,まず目指すスポーツパフォーマンスの構造,すなわち設計図としての構造モデルを明示する必要があるといわれている(JSPO,2019).陸上競技の跳躍種目やスプリントなどの測定競技におけるパフォーマンスは,跳躍距離や走タイムといった明確な指標があることから比較的構造化しやすいと考えられるが,球技スポーツにおいてはそのパフォーマンス構造を戦術,技術,体力といった階層構造で捉える必要があるとともに,より抽象化した概念でパフォーマンスを説明する必要があるだろう.本論では,上位の公認スポーツ指導者資格を保有する著者がテニス競技のゲームパフォーマンスの構造化を試み,アイデアとして提示した.テニスの目的や仕組みといった抽象的な要素,そして具体的な試合技術としての戦略や戦術,その戦略や戦術を達成するための技術の詳細,つまり1 ショット1 ショットの技術構造というように,そのつながりやそれぞれの要素について概説した.著者が作成した可視化されたテニスのゲームパフォーマンス構造は,選手と指導者が共通理解を深める上で重要なツールとなり得るだろう
  • 中澤 翔, 杉田 正明
    2025 年17 巻 p. 66-73
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,6 ヶ月以上にわたるEPA 摂取が血中EPA 濃度,EPA/AA 比,5000m 走記録に与える効果について検討することを目的とした.大学男子長距離走選手58 名(5000m 走記録14 分30 秒6 ± 30 秒0)を対象にした結果,(1)EPA の摂取群は非摂取群よりも血中EPA 濃度,EPA/AA 比が高く,(2)摂取群の血中EPA 濃度,EPA/AA 比,5000m 走記録は摂取前から摂取後にかけて向上した.(3)EPA 摂取した選手を事例的に分析した結果,EPA 摂取した時期から血中EPA 濃度,EPA/AA 比および競技記録の向上がみられた.以上のことから,EPA 摂取により,血中EPA 濃度,EPA/AA 比を高め,安全で良好なトレーニングを実施できたことが予想され,結果として,競技記録向上に効果がある可能性が示された.
  • 田中 耕作, 森 寿仁, 高井 洋平, 山本 正嘉
    2025 年17 巻 p. 59-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,長距離ランナーを対象に,上り傾斜と水平面を交互に走るドリル(上り坂ドリル)が接地時の膝関節屈曲量(膝のつぶれ)を一過性に小さくするか否かを明らかにすることを目的とした.7名の長距離ランナーに,トレッドミル上で傾斜6% と傾斜なしを交互に4 回ずつ時速12 km で走らせた.その前後に,右側方からランニング時の映像を取得し,股関節,膝関節,足関節の座標を算出し,膝関節角度を算出した.膝のつぶれは,接地時から最大屈曲位までの膝関節角度の屈曲量で表した.その結果,膝のつぶれは,介入前で21.6 ± 6.0 度,介入後では18.5 ± 4.6 度で,有意に減少した.また,介入前の膝のつぶれの大きさがドリル後の変化率と有意な相関関係にあった(r = 0.82,p < 0.05).以上のことから, 傾斜と傾斜なしのランニングを繰り返すことで,平地でのランニング時の膝のつぶれが小さくなり, その大きさはドリル前の平地でのランニング時に膝のつぶれが大きいランナーほど改善が大きいことが示された.
  • 未熟練者との比較からみた技術検討
    東山 昌央
    2025 年17 巻 p. 48-58
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/04
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本研究の目的は,登山熟練者と未熟練者の階段における昇段動作の違いを明らかにすることであった.そこで,男性登山ガイド1 名(熟練者)と,登山経験の少ない男性1 名(未熟練者)を対象に階段歩行実験を実施し,動作分析法により両者の違いを分析した.1)熟練者は未熟練者と比較して,股関節の伸展範囲が大きいことが確認された.また,重心の挙上時に,伸張- 短縮サイクル運動により,重心を効率よく挙上している可能性が確認された.2)熟練者は,足部接地後に,身体重心速度が抑制される局面がみられた.歩行動作のなかに筋の緊張を解く局面を設けることで,筋疲労の蓄積を効率よく抑制している可能性が考えられる.3)熟練者は,足部離地時における足関節の底屈動作が小さいことが確認された.これにより,転倒につながる蹴り出し動作を抑制し,安定性の高い動作を実現していると考えられる.以上,熟練者は,股関節の伸展,および伸張- 短縮サイクルの活用により,効率よく昇段動作を行っていること,動作のなかに筋疲労の蓄積を抑制する停止局面を設けていること,蹴り出し動作を抑制した安定性の高い動作を実現していることが可能性として考えられる.
  • 山口 裕太郎, 秋山 央
    2025 年17 巻 p. 24-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/29
    ジャーナル フリー
    日本のバレーボール戦術の発展のためには,世界レベルの分析も重要であるが,国内に目を向けることが必要である.そこで国内トップカテゴリーのV リーグ(2019 ‐ 20season)を対象に,勝敗への影響が大きいとされる「アタック」について,試合の勝敗との関連を分析した.アタックを状況別に細分化し,項目ごとに分析することで,チーム作り等の指針を得ることを目的とした.結果では主に,レセプションの返球状況が良いインシステム時のクイックの使用,決定力,失点に関する項目と,攻撃状況に関わらず,ライトサイドでアタックを行うオポジットの試合を通じた働きが勝敗に大きく影響することが示唆された.攻撃状況が整ったときにクイックを使って得点をとり,乱れた状況下でオポジットが得点をとれるチームが試合に勝つ.国内のバレーボール構造を明確にした点で,非常に有意義な研究であったと考えられる.V リーグにおけるオポジットは外国籍選手が多く, 外国籍選手の能力がチームの勝敗を決定付けているといっても過言ではない.この研究を基に国内で勝つだけでなく,世界に通用するバレーボール構造を考えていく必要があるだろう.
  • 志々目 由理江, 藤田 英二, 小澤 雄二, 中村 勇
    2025 年17 巻 p. 17-23
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー
    本研究は柔道選手における前腕筋群へのアイシングが,組み手時の相手柔道衣への把持時間に与える影響を検証することを目的とした.大学生女子柔道選手7 名(年齢:20.0 ± 1.2 歳,競技歴:12.3 ± 2.5年)を対象とし,前腕筋群の疲労を惹起させる課題運動と,実際の試合を想定した視覚障害者柔道ルールによる模擬試合を5 分間の休息を挟み行わせた.休息間に前腕筋群をアイスバスに浸すアイシング条件と,座位のみの安静条件の2 条件間で,模擬試合での引手側が切られた際の「始め」から「待て」までの柔道衣把持時間と,引手側が切られた回数を比較した.その結果,アイシング条件の柔道衣把持時間は安静条件よりも有意に長く(アイシング条件:18.8 ± 6.2 秒,安静条件:13.9 ± 3.9 秒),引手を切られた回数(アイシング条件:11.0 ± 2.6 回,安静条件:16.0 ± 5.4 回)も減少していた.これらの結果から,実際の柔道競技大会においても試合間に行う前腕筋群へのアイシングは,前腕筋群の疲労に対するリカバリー法として有効であり,試合時における組み手時の把持筋持久力低下を防げる可能性が示唆された.
  • 東京オリンピック日本代表選手を対象に
    碩山 莉穂, 山下 龍一郎, 金高 宏文
    2025 年17 巻 p. 1-16
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー
    体操競技のターン技に関する研究知見や指導書は今から30 年以上前のものが多い. 30 年前と現在ではルールや技が大きく異なり,それに伴って技術や捌き方も変化している.そこで本研究では,平均台種目のしゃがみ立ち3 回ターンに関して,習熟者における動感の実践知を明らかにすることを目的とする.対象者は2021 年東京オリンピック日本代表選手1 名とし,聞き手2 名によるインタビュー調査を行った.インタビュー調査の結果,対象者の当該技の動感の構造が明らかとなり,腕の振り動作が技の成否を左右していると推察された.なお,対象者は軸を崩さないために腕の振り全般の動作を最大限の大きさやスピードで行わず,浮脚の振りも使って回転力創発を補っていたことが明らかになった.
feedback
Top