教育経済学研究
Online ISSN : 2436-1801
Print ISSN : 2436-1798
多文化共生と障害文化に関するテキストマイニング分析
―「障害」「文化」「共生」の言説とコミュニティの学習過程―
渡邉 尚孝趙 彩尹
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 4 巻 p. 12-32

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抄録
総務省(2020)による多文化共生推進プラン改訂は,グローバル化への対応や民族的異文化理解促進による地域活性化及び経済の担い手確保を目的としたものに留まっている。多様性と包摂性のある社会の実現を謳う一方で,その対象に障害者は含まれていない。1970 年代以降の障害者運動は徐々に「文化運動」的な色彩を帯びてきたが,同プランにより改めて文化的存在としての障害者が不可視化されていることは問題である。本研究では,「障害」「文化」「共生」というキーワードを基に,「障害文化」に纏わる社会的言説に関する新聞記事を抽出し,KH-Coder を用いたテキストマイニング分析により社会的事象との関連を概観することを目的とした。人権尊重と多文化共生に注目が集まる中,障害者集団が育んできた生活文化に係る用語がどのように認知及び使用されているのか文脈を把握することを試みた。分析の結果,「障害者の生活の総体」を「文化」として理解する言説や,その学習過程に関する文脈はほとんど確認できなかったものの,文化芸術やパラスポーツの振興に伴い,当事者の諸活動と「共生」の関連記事が日常的に立ち現れては消えて行く傾向を明らかにした。また,それらの課題と先行研究を踏まえ,当事者自身の表現活動意欲や SNS 等の多様な媒体を駆使した継続的発信と相互交流,そして健常者側の好奇心をかき立てる演出や工夫の必要性など仮説を立てることで「障害者」を含む多文化共生推進の一助とした。
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© 2023 公⽴⼤学法⼈下関市立大学
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