2011 年 32 巻 4 号 p. 422-433
平均余命の伸長が著しいなか,高齢期の心理的発達をとらえる理論的枠組みが求められている.本研究は,その発達過程を探索するため,心理的発達を遂げている超高齢者を対象に,彼らが日常生活で体験していることを記述することを目的とした.超高齢者8人を対象に面接調査を実施し,解釈的現象学の視点から質的分析を行った.
超高齢者の語りのうち,生命,生活,人生という生(life)の諸側面に対する意味や価値に焦点を当て,意味ある単位に分類した結果,「つながっていること」「変わっていくことに気づくこと」「変わらないことを見いだすこと」「自分だけにできることをみつけること」の4つのテーマを抽出した.この結果から,超高齢者の生の体験は,客観的な事実から成る状況に身をおきつつ,二元的思考を脱する実存的な体験としてとらえることができるであろう.今後,かかる超高齢者における生の実存的側面をとらえるために,超越の視点が必要であると考えられる.