老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
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老年期のGenerativity研究の課題
── その心理社会的適応メカニズムの解明に向けて ──
小澤 義雄
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2012 年 34 巻 1 号 p. 46-56

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抄録

 Erik Eriksonによって提唱されたGenerativity,すなわち生み育てることと心理社会的適応との結びつきをとらえる概念に関する研究は,社会科学諸分野にて精力的に取り組まれてきている.そのなかで,Generativityは,Eriksonが当初想定した中年期にとどまらず,老年期にかけてまで,人間の生においてさまざまな意味をもつことが報告されるようになった.しかし,その背後にある心理社会的適応メカニズムについては十分な解明が進んでいない.本論では,老年期のGenerativity研究が心理社会的適応の問題を扱うための枠組を明確化することを試みる.まず,中年期のGenerativityの概念およびGenerativityと心理社会的適応を結びつけて検討した実証研究の動向を概観し整理する.次に,老年期のGenerativityに関する議論と実証研究を概観し,心理社会的適応のメカニズムを検討するうえでの課題を明らかにする.最後に,老年期のGenerativityの心理社会的適応メカニズムを明らかにするために,Narrative approachの枠組みに対し,高齢者の思考が有する時制の特徴を踏まえ視座を与える.

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© 2012 日本老年社会科学会
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