2012 年 34 巻 3 号 p. 360-369
本研究は,介護老人福祉施設における介護職員の仕事満足度と認知症ケア困難感との関連について検討することを目的とした.介護職員1,266人に調査票を配布し,576人の有効回答を分析した.介護職員の認知症ケア困難感が仕事満足度に影響するという因果関係モデルを設定し,その因果関係モデルのデータに対する適合性と各変数間の関連を構造方程式モデリングで検討した.その結果,前記因果関係モデルはデータに適合し,認知症ケアの困難感は介護職員の仕事満足度と有意な負の関連性があることが実証できた.この結果から,介護職員の仕事満足度の向上につなげていくためには,個々の介護職員の効力感を高めていけるような職員教育を進めていくことの必要性が示唆された.本研究では一定の施設の限られた介護職員を対象にしたこと,結果における仕事満足度の寄与率は5.2%で高い説明率には至っていないことから,今後さらに検討を加えることが課題である.