老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
34 巻 , 3 号
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原著論文
  • 石岡 良子, 権藤 恭之, 黒川 育代, 蓮花 のぞみ
    2012 年 34 巻 3 号 p. 317-324
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,健聴から軽度,中等度の難聴の高齢者を主な対象者と想定した聴力の主観評価尺度を作成することである,加齢に伴って聞こえの困難さを自覚しやすい日常場面を用いた7項目からなる尺度を作成した.本尺度の特徴を把握するため,純音聴力検査を実施し,本尺度とともに基本属性,補聴器装用の有無,病気,性格特性,感情状態,精神的健康について回答を求めた.60歳以上の高齢者186人を分析した結果,本尺度は1因子構造を示し,信頼性の高い尺度であることが確認された.本尺度を目的変数とした重回帰分析の結果から,平均聴力レベル,補聴器装用の有無,外向性,ネガティブ感情が有意に関連することが示された.本尺度によって,平均聴力レベルとは異なるが,日常生活における聞こえの困難さを簡便に把握することができる.今後本尺度を用い,高齢期の聴力低下が心理・社会的側面に与える影響について検証することが望まれる.

  • ―― モニタリング機能とヘルパー指導機能の評価を中心として ――
    須加 美明
    2012 年 34 巻 3 号 p. 325-334
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     目的:サービス提供責任者の調整業務の評価尺度の開発を目的にした.

     方法:モニタリング機能とヘルパー指導機能を尺度の主な構成概念とし,サービス提供責任者167人を対象に質問紙調査を行った.有効回答は112件,回収率67%であった.統計解析は探索的因子分析と確認的因子分析を行った.

     結果:確認的因子分析によるモデルの適合度はよく,構成概念妥当性がある程度確認できた.バーンアウト, 仕事への満足感などを外的基準に関連を調べたところ,有意な相関を示し基準関連妥当性が確かめられた.2因子のクロンバックのαは.77と.84で,一定の信頼性が認められた.

     結論:モニタリング機能とヘルパー指導機能を構成概念とした尺度の信頼性と妥当性がある程度確かめられた.調整機能の全体を評価するためには,ケアマネとの調整などを評価する尺度を追加して開発することが今後の課題である.

  • ―― テキストマイニングによる自由記述回答の分析――
    大島 千帆, 児玉 桂子
    2012 年 34 巻 3 号 p. 335-349
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,介護支援専門員がとらえる在宅生活を送る認知症高齢者の在宅環境配慮の効果を明らかにすることである.

     関東地方の居宅介護支援事業所2,000か所に郵送調査を行い,254人の介護支援専門員の担当している認知症高齢者の在宅環境配慮の具体的な効果に関する735件の自由記述回答をテキストマイニングによって分析した.その結果,「在宅環境配慮の効果」として<生活の活性化><身体や設備の清潔保持><安全確保や危険防止><動作のしやすさ><介護負担軽減><わかりやすさ><生活の落ち着き>の7つを抽出した.

  • ―― 5年後の追跡調査 ――
    島田 今日子, 山崎 幸子, 中野 匡子, 斉藤 恵美子, 渡辺 幸子, 安村 誠司
    2012 年 34 巻 3 号 p. 350-359
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究は70歳以上の地域高齢者を対象とし,同居家族からのソーシャル・サポートの有無が,うつ傾向の発生に与える影響を5年後の縦断データで検討した.分析対象者は男性223人,女性309人(平均年齢76.2歳)であった.調査では性別,年齢,家族構成,ソーシャル・サポート,うつ傾向,身体,心理的要因について回答を求めた.ソーシャル・サポートは情緒的,手段的ソーシャル・サポート別にし,うつ傾向の発生に関連する要因を調整変数として,各ソーシャル・サポートを説明変数,うつ傾向発生を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.その結果,手段的サポートとの関連は認められなかった.一方,同居家族からの情緒的サポートが低い人は,高い人に比較してうつ傾向発生のリスクが有意に高く(OR = 2.31,95% CI 1.16−4.60),うつ傾向の発生を防ぐためには同居する家族からの情緒的な支援が重要であることが示唆された.

  • 原 祥子, 實金 栄, 吉岡 佐知子, 太湯 好子
    2012 年 34 巻 3 号 p. 360-369
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,介護老人福祉施設における介護職員の仕事満足度と認知症ケア困難感との関連について検討することを目的とした.介護職員1,266人に調査票を配布し,576人の有効回答を分析した.介護職員の認知症ケア困難感が仕事満足度に影響するという因果関係モデルを設定し,その因果関係モデルのデータに対する適合性と各変数間の関連を構造方程式モデリングで検討した.その結果,前記因果関係モデルはデータに適合し,認知症ケアの困難感は介護職員の仕事満足度と有意な負の関連性があることが実証できた.この結果から,介護職員の仕事満足度の向上につなげていくためには,個々の介護職員の効力感を高めていけるような職員教育を進めていくことの必要性が示唆された.本研究では一定の施設の限られた介護職員を対象にしたこと,結果における仕事満足度の寄与率は5.2%で高い説明率には至っていないことから,今後さらに検討を加えることが課題である.

  • ―― 8年間の縦断的検討 ――
    西田 裕紀子, 丹下 智香子, 富田 真紀子, 安藤 富士子, 下方 浩史
    2012 年 34 巻 3 号 p. 370-381
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究では,高齢者の抑うつがその後8年間の知能低下に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.分析対象は,「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第1次調査(ベースライン)に参加した65〜79歳の地域在住高齢者805用いて評価した.また,知能の変化は,ベースラインおよび2年間隔で行われた4回の追跡調査において,ウェクスラー成人知能検査改訂版の簡易実施法(知識,類似,絵画完成,符号)により測定した.線形混合モデルを用いた分析の結果,抑うつの有無は,「知識」「類似」「符号」の経年変化に影響を及ぼすことが示された.一方,抑うつから「絵画完成」の経年変化への影響は認められなかった.以上の結果から,高齢者の抑うつは,その後8年間の一般的な事実に関する知識の量,論理的抽象的思考力,および情報処理速度の低下を引き起こす可能性が示された.

  • 絵本の読み聞かせ高齢者ボランティアREPRINTSの実践報告から 
    村山 陽, 安永 正史, 大場 宏美, 野中 久美子, 西 真理子, 李 相侖, 渡辺 直樹, 小宇佐 陽子, 深谷 太郎, 竹内 瑠美, ...
    2012 年 34 巻 3 号 p. 382-393
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,小学校時における高齢者の絵本読み聞かせボランティア“REPRINTS”との世代間交流が中学入学後の地域活動参加意識に及ぼす長期的効果について検証した.調査対象者は川崎市の中学1年生181人であり,そのなかで小学生時に“REPRENTS”と交流体験がある55人を「交流体験あり群」,交流体験がない126人を「交流体験なし群」として効果の検証を行った.パス解析を実施した結果,「交流授業体験」が,「高齢者ボランティアとの親密さ」「絵本読み聞かせへの関心」および「高齢者イメージ」を媒介として,中学入学後の「地域活動参加意識」の向上に影響していた.また,「性別」が「絵本の読み聞かせ関心」を媒介にして「地域活動参加意識」を規定していた.青年前期の地域活動参加を促すには,児童期の世代間交流体験,性別に加えて高齢者イメージ,交流プログラムへの関心,高齢者ボランティアとの親密感といった認知・情意的プロセスを考慮した交流内容が重要になろう.

資料論文
  • 相原 洋子
    2012 年 34 巻 3 号 p. 394-402
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     経済や教育といった社会要因と健康格差について,世界的な関心が高まっている.社会要因は食生活行動,栄養状態と強い関連を示し,その背景として食や栄養に関する情報量や知識との関連が示唆されている.高齢化が著しいわが国では,介護予防や医療費抑制のうえで,高齢者の栄養状態の改善を検討することは,重要な保健課題であるとし,本研究では社会要因と食と栄養の情報源,さらに多様な食品摂取との関連について分析した.分析対象者は地域の75歳以上高齢者645人であり,経済,教育年数によって情報源,食品摂取の多様性に違いがある結果が得られた.多変量解析の結果,本・雑誌,新聞から栄養情報を得ている人は,多様な食品を摂取する傾向にあった.活字を媒体とした情報源が,高齢者の食生活行動を促すうえで有用であることが示唆された.一方で社会経済状況の低い人に対して,アクセスならびに理解しやすい情報媒体の検討が重要であると考えた.

  • 大塚 理加, 野中 久美子, 菊地 和則, 大島 浩子, 三浦 久幸
    2012 年 34 巻 3 号 p. 403-411
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     高齢者の低栄養状態は,免疫力を低下させ,虚弱を招くことから,その改善は在宅生活を継続するうえで重要である.とはいえ,地域高齢者の栄養改善のための生活支援の実態はほとんど明らかになっていない.そこで本研究では,栄養改善のための地域高齢者への生活支援の現状と問題点を明らかにすることを目的にした.そして医師と地域包括支援センター職員を対象にインタビュー調査を実施し,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.この結果,低栄養の高齢者の把握がなされていないという問題が示唆された.また,栄養状況の改善には,そのための生活支援の必要性を地域包括支援センター等が把握することが必要であり,そのために,家族からの協力を得ることや高齢者がコミュニティからの支援を受けられることが重要であることが示された.

  • 小池 高史, 野中 久美子, 渡邊 麗子, 深谷 太郎, 藤原 佳典
    2012 年 34 巻 3 号 p. 412-419
    発行日: 2012/10/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     見守りセンサーに関する研究で,これまでになにが検討され,明らかにされてきたかを把握しようと試みた.「CiNii」「PubMed」を用いて検索された研究のなかで,見守りセンサーと関係のあるものを抽出した.和文の論文は90編あり,2002年以降,顕著に論文数が増加していた.各論文が掲載されている雑誌の属する分野は,医学・看護学分野と工学分野に分けられたが,工学分野での研究が大半を占めていた.英文の論文は77編あり,2000年代後半以降に急増していた.検索された研究の多くは,センサー機器やセンサーを用いた見守りシステムの開発を報告するものや,センサー自体の機能を検証するものであった.少数の医学・看護学系研究においても,その対象や検討範囲は限定されていた.今後は,見守りセンサーによって高齢者のADLやIADLといった生活機能が維持されるかどうかという点に加えて,主観的幸福感や生活満足度が向上するかなどという心理的側面の検討も必要だと考える.

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