宗教研究
Online ISSN : 2188-3858
Print ISSN : 0387-3293
ISSN-L : 2188-3858
「サンスクリット化」概念の妥当性 : 南インドのテイヤム儀礼の事例から
古賀 万由里
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 81 巻 1 号 p. 143-164

詳細
抄録
「サンスクリット化」とは、インド出身の文化人類学者のシュリニバスが提示した概念であり、それは、低位カーストは高位カーストの生活を模倣することにより、社会的地位を上昇させる動きである。南インドのケーララ州のテイヤム信仰をみると、その神話は、プラーナ神話と地域神話の二つの型がみられ、結合している場合が多いが、それは必ずしも近年のカースト上昇志向によって生じたのでなく、長い年月の中で融合していったものである。また儀礼では、ブラーマン司祭の関与がみられるが、主な担い手であるパフォーマーは不可触民であり、ブラーマン儀礼は部分的にとりいれられているにすぎない。さらに、パフォーマーで地位が上昇しているものは、上昇志向があってサンスクリット文化を模倣しているわけではない。また、社会的地位向上の手段としては、経済的状況の改善が重要視されている。
著者関連情報
© 2007 日本宗教学会
前の記事 次の記事
feedback
Top