宗教研究
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論文
旧仏教の逆襲
明治後期における新仏教徒と釈雲照の交錯をめぐって
亀山 光明
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2019 年 93 巻 1 号 p. 25-49

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抄録

本稿が対象とする「正法運動」と「新仏教運動」は明治期を代表する仏教者の二大運動である。前者を指導した釈雲照(一八二七―一九〇九)は、江戸期の僧侶として前半生を過ごし、維新期における廃仏毀釈の嵐に際会すると、「戒律」の復興こそが仏教の復興につながると確信し、幅広い活動を展開した。他方で後者の新仏教運動は、保守的な教界に反発を抱く青年仏教徒たちによるユースカルチャーとして成立した。彼ら新仏教徒たちは雲照の思想を乗り越えるべき「旧仏教」と位置付けることで、その対立は先鋭化する。

中世から近世にかけては、多くの律僧たちが戒律復興を試みたように、「戒律」は仏教刷新の中心的イデオロギーの一つであったことは注目に値する。そのため近代仏教において、「戒律」の位相を再検討することは、在家と出家者の区別が曖昧になるとされる日本仏教の近代への新たな理解をもたらすと考えられる。本稿はかかる問題意識の下に、明治期の二つの仏教運動の衝突の考察を試みるものである。

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