2020 年 94 巻 2 号 p. 3-28
本稿は、グローバル化する奄美大島の宗教と地域社会のかかわりについて、トランスナショナリズムの視点から考察することを目的とする。奄美を舞台に国際移住したカトリック信者・宗教者を手掛かりに、カトリックという宗教を軸に越境を捉え、出身地と移住過程、移住先とでトランスナショナル宗教的紐帯およびコミュニティが、どのように形成されるのかについて確認する。
本稿では、具体的な事例として、奄美出身日系ブラジル人一世、日系ブラジル人二世、ブラジル帰国者のシスター、日本人女性と結婚した韓国人、中国人元留学生、ベトナム人司祭およびベトナム人たちを取り上げ、聞き取り調査および現地参与観察を通して検討した。結果として、奄美国際移住者たちは地域コミュニティを維持する人材として包摂されたため、教会を媒介とした出身国と奄美間の宗教的紐帯は見られず、トランスナショナル宗教的コミュニティとしてのディアスポラも確認できなかった。