2022 年 96 巻 2 号 p. 3-28
出版資本主義から近代国民国家を立ち上げた想像の共同体において「視覚障害」は、墨字読者の周辺に位置づけられた存在となった。それ以前から実在してきた琵琶法師等盲人僧たちの研究やその周辺に存在してきたイタコたちの研究は、そうした近代社会に表象された姿を相対化する研究となってきた。本稿ではこうした「目に見えない世界」の研究者であり、かつ、当事者でもある広瀬浩二郎の研究と実践を分析することで、これまでの宗教研究の理論や議論に対し「参与の感覚」「点字的脱構築」「参与への誘い」といった諸側面からの再考を迫るものとなる。また広瀬自身による応答はこれらの諸側面がどのように通底するのかという理解を促進するものとなろう。