宗教研究
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論文〔特集:戦間期の宗教と宗教研究〕
科学論からみた天皇制下の国家
戦間期を中心に
岡本 拓司
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2023 年 97 巻 2 号 p. 101-125

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抄録

江戸時代中期には科学と宗教の対立は見られなかったものの、幕末に西洋の文物が大量に流入し始めると、科学の浸透を通じた倫理・道徳等への影響が、西洋から及ぶことへの懸念が生じ始める。明治維新以降、西洋において科学と宗教の分離が進んでいることが理解されるとこの懸念は薄れ、他方では統治と道徳の根拠としての天皇の神聖性が受容を見ることとなる。しかし、ソヴィエト連邦の誕生以降、科学的社会主義の影響が日本に及ぶと、科学と、国家が帯びる宗教性との間に整合性を見出すという思想上の課題が意識されるようになる。この課題は、一九四〇年から一九四三年まで文部大臣を務めた橋田邦彦の、科学に携わる人間の精神性に注目した議論により一定の解決を見るが、英米との科学戦での頽勢を精神性によって補うことはできず、原子爆弾に象徴される英米の科学と物質に対し日本が敗北を喫した反省から、第二次大戦後の国家と社会は、科学技術の振興を目標とするに至る。

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