2023 年 97 巻 2 号 p. 51-74
現状における日本仏教の連合組織は、「全日本仏教会」である。同会は自らのルーツを、一九〇〇(明治三三)年に設立された、国家の宗教統制に反対した団体であると説明する。
しかし実際には、一九一二(明治四五/大正元)年に形成された「仏教各宗派懇話会」が出発点であった。その後、一九一六年に「仏教連合会」へ改称され、仏教界をめぐる世俗的な法制の整備と僧侶の法的待遇の是正を求めて、政府に働きかけた団体である。戦間期の日本仏教宗派は、制度改革を強く主張するため、仏教界が一体となり連合化を図ったのである。そして日中戦争の勃発後は運営基盤の強化のため、一九三八(昭和十三)年に財団法人となり、後には、「大日本仏教連合会」、「大日本仏教会」と改称した。
仏教連合会は、国家の施策に協力しながらも、時には対立し、異議を唱えるなど、戦間期の仏教界を取り巻いた政教関係を見る上で、重要な示唆を与える団体である。