本稿では、二〇二一年十月に提出されたソヴェ委員会報告書について論じる。この報告書は、一九五〇年から二〇二〇年のフランスで、カトリック教会の聖職者から性的虐待を受けた子どもの数は推定約二一万六千人にのぼる、と発表して世論を震撼させた。本稿の目的は、この報告書を読み解き、現代フランスにおけるカトリシズムと社会規範の関係を解明することにある。本稿が示すのは、カトリシズムは現代フランスにおいて、教会の規範に対する共和国の規範の優先性を認めざるを得なくなっているという見方である。カトリック教会は近年、公共空間での存在感をたしかに取り戻しているが、教会の規範と共和国の規範に摩擦が生じるとき、教会は共和国に道を譲ることを余儀なくされている。報告書の内容とその受容からは、この教会の規範に対する共和国の規範の優先性が、教会における性的虐待の問題においても観察可能であることがわかる。だが同時に、この報告書はカトリシズムの内側から、教会に刷新を迫るテクストとして読むこともできる。