レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集(医療機器の生物学的安全性試験法ガイダンス改定)
化学分析を用いた医療機器の生物学的安全性評価に係る課題と解決策
野村 祐介森下 裕貴福井 千恵高原 健太郎宮脇 俊文蓜島 由二
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2020 年 10 巻 2 号 p. 69-78

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抄録

身体と接触する医療機器は, ISO10993シリーズに準拠した生物学的安全性評価の実施が求められている. 当該規格では, 細胞毒性, 刺激性および感作性試験等の生物学的安全性試験法を提示しているが, ISO10993-1 「医療機器の生物学的安全性試験の基本的考え方」 では, 当該試験実施前に医用材料の化学的特性に関する情報収集を要求している. ISO10993-18およびISO/TS 21736に新たに記載された医用材料の化学的特性評価および毒性学的懸念の閾値 (TTC) の概念は, 開発コスト削減や動物福祉促進につながるため, 化学分析を利用した生物学的安全性評価は, 今後ますます利用されると考えられる. 化学分析は分析対象が決まっている場合, 医療機器からの溶出量およびヒトへのばく露量評価に非常に有用であるが, 医用材料メーカは不純物を含めた全組成を開示しないため, 化学分析に利用できる情報は限定される. それゆえ, TTCアプローチは, 医療機器の包括的な定性・定量分析に利用可能であるが, 同アプローチに利用される現在の抽出物/溶出物 (E & L) 分析には, 検討すべき課題が幾つか残存する. 本項では, ハザード解析の概念, 検出感度および分析手法など, 現行のE & L分析の問題を提示する. さらに, 当該E & L分析とは一線を画すと共に, 遺伝毒性および感作性試験の代替となるTTCおよび新規皮膚感作性の閾値 (DST) の概念を利用した戦略的分析パッケージを紹介する.

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© 2020 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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