レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集(新規in vitroアッセイ系の開発と医薬品評価への応用)
臨床における臓器毒性予測を目指したヒトin vitroモデル開発の現状およびその展望
鮫島 知哉岡井 佳子小原 洋志松井 俊勝木村 真弥篠澤 忠紘
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2021 年 11 巻 1 号 p. 63-74

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抄録

近年の生命科学の進歩, および創薬研究への多大な投資にもかかわらず, 医薬品開発の成功確率は依然として低いままである. 臨床試験が失敗する理由として, 安全性の問題が大きな割合を占めており, 如何に毒性懸念のない化合物を選抜するかが創薬成功の鍵であるといえる. しかし, 主に動物モデルが使用される前臨床試験の結果から, 臨床試験における毒性を予測することは, ヒトとの種差の観点から依然困難である. 近年, この問題を解決するために, ヒト細胞を用いたin vitroモデルが注目を集めている. このような新規in vitroモデルは, 従来のin vitro試験で汎用されてきた細胞系に比べ, 生理学的に近い機能を有し, 臨床における毒性を高精度で予測することが期待できる. また, スループットが高いことから, 創薬初期段階から適応することで, より有望な化合物を選抜し, 研究開発資源を集中させることも可能となる. 本総説では, ヒトにおける毒性予測を志向したin vitro評価系の中でも, 特に医薬品開発失敗の2大要因となっている心毒性および肝毒性に対する評価系について紹介する.

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© 2021 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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