2022 年 12 巻 1 号 p. 17-24
研究開発型製薬企業と医療機関との円滑な協働のためには,高い透明性の確保と,情報公開による社会からの信頼・信用の獲得は不可欠である.日本製薬工業協会や医療用医薬品製造販売業公正取引協議会は,奨学寄附のあり方や医療機関との関係性に関する指針などを示している.加盟各社はそれらの指針を遵守し,医療関係者や研究者が企業から独立して行う「研究」や学会などが行う「学術集会・講演会」に対し,各社の責任のもと「寄附」による支援を行っているが,多くの課題が残されている.ファイザーでは,医療関係者や研究者が企業から独立して,自ら企画・立案し,自らの責任で実行する患者さんのアウトカムを向上させるための課題解決の取り組みに対し,契約にもとづく「助成」による支援を行っている.この助成の枠組みでは,期待される成果を事前に評価し,助成契約を締結した後に資金や物品供与による支援を行い,支援の結果,患者のアウトカムがどのように改善・向上したかについても報告を求める.また,この助成による支援の対象は研究分野にとどまらず,医療現場で必要とされている医学教育やトレーニング,医療関係者の行動変容やシステム(体制)の変更を促すための取り組みにまで及ぶ.本稿では,日本における製薬企業からの支援,とりわけ奨学寄附による支援に対する問題提起を行うとともに,ファイザーの助成プログラム “Independent Medical Grants” の紹介,および製薬企業からの支援のあり方に関する提言を述べる.